2014年08月18日(月) 12時21分

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート:後塵を拝する「ネイティブシフト」と「ヒットゲーム創出」のためにグリーが打ち出した施策とは

グリー株式会社は8月13日、2014年6月期第4四半期決算説明会を同社セミナールームにて開催した。依然「フィーチャーフォンからスマホ」「ウェブゲームからネイティブ」の変化に苦戦する一方、本格的にネイティブアプリへシフトする体勢が打ち出された。今期の注目タイトル情報と併せてレポートする。

 

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート

▲グリー株式会社 代表取締役社長
田中 良和 氏

 

通期・四半期共に前期比減収減益 スマホ・ネイティブアプリへのシフトに苦しむグリー

 

グリー株式会社(以下「グリー」)の通期(2013年7月~2014年6月)及び第4四半期(2014年4月~6月)の決算概要は下記の通り。

【通期】
売上高  1,256.0億円 (前期比 ▲266.4億円)
営業利益  350.1億円 (前期比 ▲129.8億円)

【第4四半期】
売上高  265.8億円 (前期比 ▲45.0億円)
営業利益  61.3億円 (前期比 ▲38.2億円)

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート

 

今回の決算発表ではいずれも前期比で減収減益という結果となり、通期では売上高で2割弱、営業利益は3割弱の減少と大きく下がることとなった。

かねてより「フィーチャーフォン・ウェブゲーム」から「スマホ・ネイティブアプリ」へシフトするこの時期において、前者の売上が減退する中で後者へのシフトが思うように進んでいないというコメントは同社からも以前の決算説明会や報道で出されていたが、最終的に当期はスマホ・ネイティブシフトに「失敗」という結果に終わったと見てよいだろう。

尚、第4四半期は新規タイトル・時事イベントの PR に広告宣伝費が嵩んだため変動費が増加したものの、今期同社が注力していた固定費の削減により財務体勢は大幅に改善された。

 

グリーは何故ネイティブシフトに失敗したか? ネイティブシフト・開発力強化とヒットゲーム創出が最重要課題

 

当四半期の売上高・営業利益の大幅減の要因としてグリーは「国内外のスタジオの売上減」を挙げた。これはフィーチャーフォン・ウェブゲーム事業が減退する分をスマホ・ネイティブアプリ事業がカバーできるだけのキラータイトルが出なかった事と、既存スマホ・ネイティブタイトルの売上が減衰したことによるという。

この状況を打破すべく今回の決算発表会でグリーが打ち出したのが「フルネイティブアプリへのシフトと開発力強化」、そして「ネイティブアプリのヒットゲーム創出」だ。

 

ウェブゲーム開発からネイティブアプリ開発へ重点シフトを断行

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート

▲グリー株式会社 取締役 執行役員
荒木 英士 氏

 

荒木氏は2015年6月期(2014年7月~2015年6月期)のゲーム事業の方針として「ネイティブシフトの断行」を掲げ、「ネイティブアプリでヒットゲームを何としても出さなければならない」とし、まずネイティアプリ開発体制の強化のため下記の施策を行うことを発表した。

 

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート

・開発スタッフの増強:現状の300名規模から1,000名規模へ
・開発ライン数の増強:現状の10ラインから20ラインへ
・パブリッシング事業の強化

 

現時点での同社の開発人員構成の内訳は大まかに下記の通り。

・ウェブゲーム開発 1,000人
・ネイティブアプリ開発 300人

「ネイティブアプリ1,000人体制」は、ウェブゲーム開発人員から700人をネイティブアプリ開発へと転換して対応することになる。

そこで懸念になる点が2つある。1つは、ウェブゲーム開発体制が3分の1以下になることで今も尚多くのユーザーがいるウェブゲームタイトルの開発・運営が滞ってしまうのではないかという点だ。

この点について荒木氏は「ウェブゲームの新規タイトル開発は今後パートナー企業との協業開発を中心にしていく」とし、グリー内製はネイティブアプリ、ウェブゲームはパートナー企業、と分けていくことを明らかにした。

もう1つの懸念点は、「ウェブゲーム開発リソースをネイティブアプリ開発へシフトするというのは可能か」という点だ。既に各所にて話題に挙げられているように、ウェブゲーム開発を中心に行っていた会社がネイティブアプリへ転身しようとする際に相当な苦労をするという話は業界の定説ともなっている。実際、グリーもそこに苦労したからこそ現在のような状況に陥っていると言っても過言ではない。

これに対しては、同社はライトフライヤースタジオをはじめ、これまでに培ってきたネイティブアプリ開発のノウハウを元に、約半年を目処にウェブゲーム開発スタッフをネイティブアプリ開発へ移行させるプログラムを構築・教育することで対応可能と回答した。

 

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート

 

「ヒットゲームを創出する」には? 「打率」と「打席数」を上げれば「ヒット」も増えるという論法

開発力を強化した先のターゲット、それは「如何にしてヒットゲームを創出するか」だ。多くのゲーム会社が挑み、明確な答えを見出せないこの「難題」、これについてもグリーは「倒し方」を提示した。

 

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート

 

今回の発表でグリーが提示したのは、「打率」と「打席数」を上げれば必然的に「ヒット」の数も増えるという方程式だ。荒木氏によると、2014年6月期までは「打率」、すなわちゲームを開発する能力を上げるフェーズであり、これは『消滅都市』をはじめとするネイティブゲーム開発の中でノウハウとして既に積み上げられてきたという。

 

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート

 

『消滅都市』は着実にダウンロード数を伸ばしており、普及という面では一定以上の成功を収めている。ポケラボの『戦乱のサムライキングダム』は月商1億円を突破し、収益面でもヒットと言えるレベルのタイトルへと成長した。

これに「打席数」、つまり開発タイトル数を乗算すれば必然的にヒットゲームを打つ確率は上がっていく、というのがグリーの論法だ。

果たしてこの「取らぬ狸の皮算用」が現実のものとなるか。少なくとも今期グリーの「打席数」、即ちネイティブアプリのリリース本数が増えてくるのは間違いないようなので、同社の目論見通りになるかが今期の注目ポイントとなるだろう。

 

グリーフルネイティブアプリ注目のタイトルはこれだ! ポケラボ新作アクション RPG『クロスサマナー』

 

今後期待されるグリーのネイティブアプリのリリースラッシュの先陣を切るのが、現在事前登録キャンペーンとして「裏ワザ入力キャンペーン」展開中のポケラボ新作アクション RPG『クロスサマナー』。直近の注目タイトルとして、今回の決算発表会でも PV が紹介された。

 

クロスサマナー ストーリー篇PV(60秒) (YouTubeでの視聴はこちら

 

本格的なアクションとド派手なコンボが特徴の『クロサマ』、スーファミ世代には懐かしさが、スマホ世代には新鮮さがたまらない期待の一作。王道ファンタジーのストーリーと世界観にも要注目だ。

 

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート

 

好調の海外市場は未開拓の「ハードコア」「欧州市場」「Android」強化へ

 

ネイティブアプリへのシフトはこれからが本番という国内ゲーム事業に対して先行しているのが海外事業だ。2011年の事業立ち上げから昨年は単月黒字を、そして当四半期には四半期黒字を達成した海外事業は、今後更なる拡大が見込める事業としてグリーでは位置付けられている。

これまでグリーの海外戦略は「ミッドコアゲーム」「北米市場」「iOS」を重点ターゲットとしてタイトルを投入してきた。これを更に

・ハードコア
・欧州市場
・Android

に拡張することで更なる事業拡大を目指すという。

先日発表された前 Kabam 社ワールドワイドゲームスタジオ最高責任者を COO に迎える等、海外拠点のタイトル供給体制の強化も積極的に推進する海外事業。国内事業とは全く異なる路線の展開が今後も見られそうだ。

【関連記事】
グリー米国子会社 COO に前 Kabam 社ワールドワイドゲームスタジオ最高責任者が就任 好調の海外・北米戦略を更に強化

 

グリー海外タイトルは大作が続々登場! 韓国スタジオ制作『ABRIA』は日本語版の登場にも期待大!

 

海外向けタイトルの注目作として今回紹介されたのが、リッチミッドコア向けの 3D ギャングアクション RPG『City of Rivals』(米国スタジオ開発)、そしてハードコア向け 3DMORPG『ABRIA』(韓国スタジオ開発)だ。

 

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート

 

ムービーでも紹介された『ABRIA』は、オンラインゲーム激戦区の韓国で開発されただけあって、国内のオンラインゲームファンも注目の一作だろう。国内でもハードコアユーザーを中心にユーザー数が増加しているジャンルなだけに、日本語版の登場が期待される。

 

ABRIA 公式トレーラー (YouTubeでの視聴はこちら

 

また、この他にも中国語圏向けに韓国スタジオ開発の 3D アクション MORPG『失楽之星(Lost in Stars)』も中国・アジア市場のパブリッシング事業の1つとして紹介された。こちらのタイトルは日本向けパブリッシングも準備中との事なので、アクション・オンライン RPG ファンはこちらも要注目だ。

 

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート

 

今冬には中国でも人気の「NARUTO -ナルト-」のゲーム『NARUTO -ナルト- 忍マスターズ』をリリースする等、欧米市場とは異なるアプローチでアジア市場を攻略していく。

 

グリーは「プラットフォーマー」? 「デベロッパー」?

 

今回の発表で業績回復の施策として「ネイティブアプリシフトの断行」を掲げたグリー。一方で衰退へと向かう、プラットフォームサービス「GREE」。グリーはこのまま「プラットフォーマー」から「一ゲームデベロッパー」へと変貌していくのであろうか。

この問いに対して、ネイティブアプリ事業については「デベロッパー」「パブリッシャー」としての組織・体制を強化する一方で、ウェブ事業についても引き続き「プラットフォーマー」として GREE プラットフォームを強化していくというのがグリーの回答だ。ウェブのユーザー層とネイティブアプリのユーザー層は全く異なる層になるので、それぞれが干渉し合わず、独立した事業として両立可能であるという考え方が根本にあるのだ。

ウェブ事業に関しても同社は引き続き新しいゲーム性を持ったウェブゲームを投入することで多数派の「既存の限られたタイトルを長く楽しむ」傾向の強いユーザーに新しい遊びを提案していく場として GREE プラットフォームの再活性化に臨むそうだ。

その例として、いずれも8月リリース予定の多人数リアルタイムバトルシミュレーション RPG『ロストランドタクティクス』、『探検ドリランド』のスピンオフタイトルのランダムダンジョン RPG『ドラゴンズパーティー 五神龍と7つのレシピ』城を美少女キャラ化した SLG『城姫クエスト』といった新規タイトルでウェブゲームでも攻勢をかけていく。

 

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート

グリー2014年6月期第4四半期決算説明会レポート

 

2014年6月期は『消滅都市』等のネイティブアプリに期待感を感じさせつつも業績としては低迷してしまったグリー。ここで培ったノウハウと改善された事業体制で今期V字回復に繋げることができるのか。続々登場する新作ゲームの動向と共に注目していきたい。

 

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