2014年06月25日(水) 23時39分

【セミナーレポート】開発陣が語る30万ダウンロードの人気 RPG『ドラゴンジェネシス -聖戦の絆-』開発現場の裏側 / gumi study #19

6月24日、gumi が主催するゲーム開発者向けセミナー「gumi study #19」が開催された。今回のセミナーでは同社の最新作 RPG『ドラゴンジェネシス』の開発の裏側を開発担当者自らが赤裸々に語った。

 

gumi study #19 開催。今回のテーマは“『ドラジェネ』開発奮闘記”

 

株式会社 gumi は2014年6月24日、同社セミナールーム(東京都・新宿区)にてネイティブゲームアプリ開発セミナーイベント「gumi study #19」を開催した。

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

 

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『ドラゴンジェネシス -聖戦の絆-』のプロジェクト概要を担当者が語る! 「gumi study #19」開催のお知らせ

 

今回は先月リリースされた同社の最新作・リアルタイムギルドバトル RPG『ドラゴンジェネシス -聖戦の絆-』の開発担当担当プログラマ、プロデューサー、デザイナーが登壇し、それぞれの立場から開発の裏話を語り、ゲーム開発における様々なノウハウを紹介した。

ゲーム開発の裏側を見ることができる機会というのは少ないので、ここでは講演の詳細を御紹介していこう。

 

メインプログラマが語る「失敗から学ぶゲーム開発 『ドラゴンジェネシス -聖戦の絆』の場合」

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

株式会社 gumi Entertainment Planning 執行役員 メインプログラマ
田村 祐樹 氏

 

まず最初に登壇したのは、『ドラジェネ』メインプログラマの田村祐樹氏だ。ゲーム業界歴12年、コンシューマゲームも含め数々の経歴を持つ“ベテラン”プログラマの田村氏が『ドラジェネ』開発における失敗、苦労した点からネイティブスマホゲーム開発の効率的な進め方を語った。

 

リアルタイムギルドバトルが特徴の『ドラジェネ』だが、シームレスにバトルや演出に移行する“コンシューマゲーム”的なプレイ感覚というのももう1つの大きな特徴として挙げられる。

そんな『ドラジェネ』を開発する上で使用した主な開発環境、技術構成要素は下記の通り。

Lua
ERLANG
C++
Python
・Microsoft Excel

(※リンクは全て Wikipedia)

Excel が出てくるのは意外に思われるかもしれないが、データ入力に主に使用したツールで、データを扱う上では「Excel は非常に便利なツール」だそうだ。

 

ゲームの構成要素別「ネイティブゲーム開発で陥る罠」

ここからは最初の本題として、「ネイティブゲーム開発で陥る罠」についてゲームの構成要素別に事例と対応方法が説明された。

 

【サウンド(BGM/SE/ボイス)】

問題点:
サウンド関連で発生する問題として挙げられたのが、「経験者がいないとゲームのサウンド制作特有のクセ・問題に対処できない」という点がある。例えば…

・データ量が多過ぎてゲームに組み込めない、データのサイズが考慮されていない。
・イントロループ再生(BGM のイントロの途中以降からループさせる処理)・クロスフェード等の音楽的なゲーム演出が考えられていない

…等、ゲームならではの必要な対応がなされていないと後々苦労することが増えてくる。勢い余って BGM を数十曲、ボイスもフルボイスで!…などと作ってしまうとサウンドだけで 1GB 超えてしまう、という事態も実はゲーム開発の現場ではよく見られる光景だそうだ。

対応方法:
『ドラジェネ』では2000万DLを超える某人気パズルゲームを担当したコンポーザーに依頼し、サウンドの調整・量の削減を行ってもらったという。「経験者・熟練者に任せる」、餅屋は餅屋論法が功を奏したようだ。

 

【アニメーション】

問題点:
様々なデザインの中でも肝となるのがアニメーションだ。ウェブゲームでは Flash で制作されることが多かったのだが、ネイティブゲームでは Flash をそのまま使うことができない。

アニメーションに関しても「リッチにしよう!」と何十ものアニメーションパターンを制作してしまったりするとやはり容量の問題にぶち当たることになるので、どういうモデル・アニメーションが必要かを予め明確にイメージしておかなければデザイナーの作業が無駄に…という悲劇が起きてしまう。

対応方法:
『ドラジェネ』は 2D ゲームフレームワークの cocos2d-X を使って開発されているのだが、専用のグラフィックツール「CocosBuilder」が開発停止しており、またその代替となる適当なツールがなかったため、内製で Flash (SWF) から OpenGL 描画できるデータを変換するツールを作って対応した。慣れた Flash でアニメーション制作をすることができたのも良かった点だろう。

アニメーション・グラフィックの量については、つまるところディレクター・プランナーが必要なボリュームを予め想定・計画しておくことで無駄を省いていくのが良いようだ。

 

【データ(当たり判定/パラメータ 等)】

問題点:
ウェブゲームとの大きな違いは、「ウェブブラウザがない」という点。そのため、ある程度ブラウザに処理を任せられたウェブゲームとは異なり、ネイティブアプリではサーバ・クライアントの同期を全てプログラミングしなければならない。サーバとクライアントのバージョンが異なると動作しないというのもよく遭遇する問題なのだが、そういったバージョン管理がウェブと比べて格段に難しくなっている。

対応方法:
更新頻度の高い要素・低い要素の切り分けを初期に行い、UI の配置等の更新頻度が高いものはダウンロードコンテンツに含める等、簡単に更新できるような仕組みを事前に用意した。また、データ構造を変更しやすいようにデータは JSON で構築し、Excel から JSON を吐き出す仕組みを作って活用した。これによってプログラマ以外のスタッフがデータ更新をしやすくなっている。

 

【ゲームバランス(難易度/ルール決め)】

問題点:
田村氏はこのゲームバランス、レベルデザインという要素がゲーム開発における「最大の鬼門」としている。と言うのも、どんなに面白いゲームであってもバランスが欠けることで一気に「クソゲー」化してしまうからだ。

対応方法:
「ゲームの運営が続く限りバランスは取り続けなければならない」という定義に基いてゲームの構造を予め設計しておくようにしている。レベルデザイン・ゲームバランスの方法には正解はないものの、参考になる書籍もあるのでそれらを参考に試行錯誤していくのも1つの手だ。

田村氏が例としてあげた書籍がこちら。

「レベルアップ」のゲームデザイン ―実戦で使えるゲーム作りのテクニック

 

「なぜプロジェクトは失敗するのか」

ここで言う「失敗」というのは、売れない・商品化にまで至らないという状態を指す。この問いの答えとして田村氏が挙げたのは、「面白いゲーム」というものは最初から存在するものではないという事。作っていく中で「どうすれば面白いゲームになるか」という答えが得られるまで試行錯誤を繰り返す環境でなければ、「面白いゲームが出来上がらない」→「失敗」という末路になる、というわけだ。

『ドラジェネ』の場合は、まず「完全新作」という事でシステム等の過去の作品からの流用を行わずに一から開発した。例えば本作の売りの1つである「ギルドバトル」は既存の作品でも使われていたシステムなのでその仕組みのソースコードも存在していた。そのソースコードを流用すれば作業は大幅に短縮できるものの、そのシステムに縛られてしまうと「面白い」システムになるまでの試行錯誤の幅が狭められてしまう。そのような事にならないようにシステムから全て一新してプログラミングしているのである。

また、「一から作り上げる」には「他のゲームがこうだからこうしよう」という考え方を意識的にしないようにするという方針も含まれている。実際に、開発中は特に開発チーム外から「あの人気ゲームと違う」という声が多く寄せられたそうだ。そのため、そういった声を跳ね除け、自分達が面白いと思ったものを愚直に信じて作り上げ、練り上げていくという「信念」がヒットゲームを作り出す秘訣なのだ。

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

▲「面白い」と思ったアイディアは、作っていく中で熟成させていくことで現実に「面白い」ゲームとして具現化するという。

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

▲「根性論も大事」と言い切ってしまうのは、何ともゲーム開発者らしい言葉だ。

 

いつの間にかプロデューサーになっていた 「プロデューサー奮闘記 ~これからプロデューサーを目指す君へ~」

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

株式会社 gumi Entertainment Planning メインプロデューサー
宮川 祥太 氏

 

次に登壇したのは、『ドラジェネ』メインプロデューサーの宮川祥太氏。プロデューサーという立場から、今回のプロジェクトで苦労した点を体験談として紹介した。「ゲーム開発あるある話」といったところだろうか。

1. 当初想定した通りのスタッフの確保ができない。
その結果、当初プロジェクトマネージャーとして『ドラジェネ』プロジェクトに参画した宮川氏だったのだが、元々予定されていたプロデューサー氏が 100% プロジェクトに携わることができず、1ヶ月後には宮川氏がプロデューサーになっていたそうだ。

2. 正確な進捗報告が上がってこない。
対処として、それまでは各セクション(ディレクター・デザイン・演出・エンジニア等)のリーダーがとりまとめていたのを、各カテゴリ・機能(クエスト・バトル・強化・合成等)毎にリーダーを決めて情報をとりまとめさせた。これによってより正確な情報が集まるようになったそうだ。また、機能をかなり細かく一覧にして完成・未完成で進捗の度合いをチェックし、そのチェックの比率から進捗度の%を出すことで進捗状況の把握をより正確に行った。

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

▲このようなチェックシートを元に全体の進捗度を把握していった。

 

3. プロデューサーの決定が止まってしまうと制作作業も止まってしまう。
プロデューサーという立場上、様々な権限や決定しなければならないことが宮川氏に集中してしまい、決定が遅れがちになってしまうことがままあったそうだ。これを一部権限を分割、各リーダーに移譲してスピードアップを成し遂げられた。

4. プロジェクトにおける目標の優先度が変わっていく。
プロジェクトが長期化すると、「予算」「時間」「品質」といった目標の優先順が変動することが起こりがちになる。これは市場や会社の状況の変化によるものが多いのだが、何を重視して開発するかが変動することで開発スタッフのモチベーション低下に繋がる場合があった。

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

▲『ドラジェネ』の場合は開発初期・中期・後期でこのように優先順位が変動していった。

 

5. スタッフが休むとその部分の作業が止まる。(作った人でないと対応できない)

6. バグがなくならない。
バグを完全に0にするというのは不可能に近いくらい難しい。この対処としては、バグの程度に応じてどこまで対応するか、という基準を明確にしておかなければならない。

7. ゲームをリリースはしたけど、イベントが約1ヶ月できなかった。
これによってユーザーもやはり減ってしまったそうだ。初期のユーザーは継続率の高いユーザーなのに離脱されてしまうというもったいない事態が起きてしまった。

 

最後に宮川氏は「プロデューサーの仕事ってなに?」というテーマに関して、某人気有名海賊漫画の主人公=プロデューサーとなぞらえて説明(この辺りの例え方は gumi らしい)。プランナー、デザイナー、エンジニアといったスタッフに「おれは助けてもらわねェとアプリを作れねェ自信がある!!!(ゴーン!)」のだが、スタッフが如何に集中してスムーズに作業を進められるようにするか、という環境を整えることがプロデューサーの役割であるとまとめた。

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

▲プロデューサーのタスクとして掲げた5つの要素。中でも宮川氏曰く「休まない」が最も重要なんだそうだ。そのための体力も求められる、それがプロデューサーという仕事だ。

 

ウェブゲームと異なる「ネイティブ開発における演出制作!! ~死闘編~」

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

株式会社 gumi Entertainment Planning メインアートディレクター
辻畑 孝信 氏

 

続いて登壇した辻畑孝信氏は、メインアートディレクターとしてアニメーション・演出制作を担当された。コンシューマゲーム開発8年、gumi でソーシャルゲーム開発2年のキャリアを持つ辻畑氏はネイティブ開発における「演出」をどのように開発したかについて講演した。

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

 

演出制作の大まかな流れは上の通り。

全体イメージ・コンセプトとして「かっこ良さとインパクト」という要望を受けて、そのコンセプトに沿って制作した「聖戦(バトル)」パートのモックがこちら。(会場では実際に動いているものを見せていただきました。)

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

 

このモックは Flash で制作している。リリース版との違いは一目瞭然だが、この時点でだいぶイメージが固まっているという事が伺える。

次に紹介したのが、「幻獣召喚」演出のコンテだ。

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

 

最初の段階で上のような絵コンテを組み上げて演出の軸をしっかり決めておかないと、後で作り直しが発生してしまい開発コストがかかってしまうという事が起きてしまう。

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

 

例えばレジェンドレア幻獣「ブラフマー」の場合は、上の絵コンテを元に、

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

 

このような演出が作り上げられていった。

演出素材制作のツールは、ウェブゲームでは FLASH のみを使用していたが、『ドラジェネ』では演出内容に応じて FLASH と Particle Designer を使い分けた。また、キャラクター・エフェクト・SE の制御には lua が用いられた。辻畑氏によると lua はデザイナーが組みやすいように調整されている開発言語とは言え直感的に制作できない点等から「デザイナーに優しいとは言えない」との事だったが、当時 GUI が他になかった・FLASH 変換だとエンジニアが制御しにくいといった事情により lua を使うことになったという。

こうして制作された演出は実機確認・ブラッシュアップを入念に繰り返して、完成・納品される。

まとめとして、ネイティブ開発の演出においてはモック・コンセプトを用いてコンセプト・イメージのすり合わせをしっかり行うこと、ツール等の技術面についてのチーム内の打ち合わせが重要であると説明した。

また、演出制作で悩んだ時の打開策として「YouTube 等の動画サイトで参考になる映像の動画を見る」ことを挙げた。辻畑氏がよく参考にしているのはパチンコ・パチスロの液晶映像演出だそうで、特にインパクトを出したい演出に関してはパチンコ・パチスロの演出を参考にすることが多いそうだ。

 

サーバ負荷の高い鬼仕様にどう対抗するか「サーバ運用者から見た、リアルタイムギルドバトル」

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

株式会社 gumi システムオペレーションエンジニア
本間 知教 氏

 

最後に登壇したのは国内アプリのサーバ運用を担当する本間知教氏だ。本間氏は『ドラジェネ』の特徴の1つである「リアルタイムギルドバトル」を実施するに当たってサーバサイドではどのようなことをしているかについて講演した。

特定の時間帯に各ギルド(ユーザーによるチーム)が集まってバトルを繰り広げるというリアルタイムギルドバトルは、『神獄のヴァルハラゲート』『戦国炎舞』等でも採用されている、スマホゲームのトレンドの要素の1つだ。決まった時間にプレイヤーのアクセスが集中するイベントであるため、その時間にサーバの負荷が一気に上がってしまう。

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

 

『ドラジェネ』の場合は、更にギルドバトル中に攻撃に必要な AP が回復するという要素が入っているために AP 回復後にラストスパートが発生するという、サーバサイドには負荷の高い仕様になっている。

 

ドラゴンジェネシス -聖戦の絆- gumi study #19

 

ウェブゲームでリアルタイムギルドバトルを実装した際はデータベースのチューニング、app サーバの AutoScaling(ギルドバトル時のみ app サーバを増設)等の対策が功を奏していたのだが、上記のような鬼仕様によってそれだけでは「甘かった」そうで、現状ではアクセス急騰に深夜でも対応したり、データベースを緊急増設する等の対策を講じているという。

現状では iOS 版のみ配信されている『ドラジェネ』だが、今後予定されている Android 版リリースによって更にユーザー数も増え、サーバの負担も大きくなっていくことが予想される。そこはサーバエンジニアの腕の見せどころのようだ。

 

ゲーム開発現場の空気が直に感じられる貴重な講演「gumi study」

 

このようなゲーム開発の現場の生の声が聞ける場というのは中々貴重なものではないだろうか。ゲーム開発者の中にいるであろう「他社ではどういう作り方・作業の進め方をしているのか」という疑問を持っている方にはもちろん、これからゲーム開発に関わろうと考えている人にも勉強になる部分が多いだろう。

また、普段ゲームをプレイしている人も、「自分達が遊んでいるゲームってどういう風に作られているのかな」という事に目を向けていただけると更にゲームに対する興味も深まるのではないだろうか。

gumi では今後もセミナーイベント「gumi study」を通してゲーム開発現場の情報・ノウハウを共有する勉強会を実施していくとの事なので、また機会があれば 9-Bit でもその模様をお伝えしてスマホゲームの魅力に更に迫っていきたいと思う。

 

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