2014年06月24日(火) 08時00分
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株式会社enish 代表取締役社長 安徳孝平氏インタビュー 第二回 「実は不安だった『ぼくのレストラン』の船出 東アジアをターゲットにした海外拠点展開」【Creator’s Voice】

『ぼくのレストラン3』がリリースされ、「ネイティブアプリ元年」として本格的にスマホゲーム市場攻略を進める enish 代表取締役社長・安徳氏のインタビュー後編となる今回は、同社の海外戦略、そしてその生い立ちとここまでの経緯から enish とはどういう会社なのかに迫った。最後は筆者の趣味でもある「ゲーム会社オフィス探訪」をお届けします。

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

株式会社enish 代表取締役社長
安徳 孝平 氏

 

インタビュー第一回はこちら。
株式会社enish 代表取締役社長 安徳孝平氏インタビュー 第一回 「ネイティブアプリとして生まれ変わったシリーズ最新作『ぼくのレストラン3』」【Creator’s Voice】

 

中国と韓国、各市場の特色 現地子会社を軸に海外市場攻略へ

 

-9-Bit:前回のインタビューで挙げられていた今後の新規タイトルを見ると、開発拠点としてソウル、上海といった海外拠点が記されています。そこで、今回はまず enish の海外展開についてお聞きしていきたいと思います。現在 enish のオフィスは全世界で何ヶ所あるんでしょうか。

 

参考
ブリッジレポート | (3667)enish | ブリッジサロン

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第一回 Creator's Voice

 

-安徳孝平氏(以下「安徳」):東京、ソウル(韓国)、上海(中国)の3ヶ所です。

 

-9-Bit:それぞれに開発スタジオがあるのでしょうか。

 

-安徳:海外の2拠点については、まずそれぞれの国をターゲットにしたゲームの運営の拠点としての体制を現在構築中です。開発・制作の体制はまだこれから、というところですね。自社で開発体制を持つとなるとかなりの人数のスタッフも雇わなければなりませんので、当初は現地のゲーム開発会社と共同で開発する体制を考えています。

 

-9-Bit:韓国・中国のそれぞれの市場について、日本の市場との違い等を教えてください。

 

-安徳:まず韓国ですが、現状ではモバイルゲームはカカオがほぼ独占している状態です。ですが、あまりにも多くのゲームが出過ぎていて、ゲームを出しても相当の広告コストをかけないと露出されず集客が難しいという状況になってきています。

 

-9-Bit:ちょっと既視感のある話ですね。

 

-安徳:最近の動向としては、ネイバーの「Band(バンド)」等の競合サービスが続々と出てきていますので、今後はカカオ一強という状態は変わっていくのでは、と予想しています。ですから、韓国でサービスする場合はカカオを軸に展開しつつ、他のプラットフォームの状況も見て…という感じになるでしょうね。

 

-9-Bit:韓国ユーザーの特徴はどうでしょうか。

 

-安徳:韓国は男女問わずゲームをプレイする人が多いという印象ですね。韓国は Galaxy Note に代表される大型のスマホ、いわゆる「ファブレット」の普及度が高くて、電車の中でもそれを横持ちにしてゲームをしている人の姿をよく見かけますよ。

 

-9-Bit:言われてみると、あまり日本ではそういう光景は見かけませんね。もう1つの、中国市場の特徴は如何でしょうか。

 

-安徳:中国で特徴的だなと思ったのは、課金を払ったという事を他のユーザーに知らしめるような演出・機能が喜ばれるという事。日本も含め他の国では、課金ユーザーと無課金で努力したユーザーであまり大きな差をつけないようなバランスにするのが好まれるんですが、これが中国ではダメみたいです。

 

-9-Bit:お金を払えば払うほど強い、と。

 

-安徳:そうです。ジャンルに関しては、男性向けのミッドコアゲームがほとんどですね。それ以外だとテンセントのカジュアルゲームがあるくらいで。

 

-9-Bit:伺っているといずれの市場も日本とは似ているようでだいぶ違うなという印象がありますが、安徳さんから見て勝算は如何でしょうか。

 

-安徳:もちろん簡単にはいかないとは思いますが… 当社はこれから7本の新タイトルがありますので、タイトルによって自社で運営したりパブリッシャーにお任せしたり、色々な角度からマーケットにアプローチしていくのが成功に繋がると考えています。

 

-9-Bit:色々な運営方法を模索されるとなると、それぞれの市場でじっくりと腰を落ち着けて攻めていかないとならないと思いますが…

 

-安徳:ええ。ですから、当然短期で結果が出ないから即撤退、という事は考えていません。日本のマーケットのボリュームを考えたら、日本の企業は海外市場を見据えなければならない。中長期で、また一社単独ではなく業界全体としてどうやって攻め込んでいくかを考えていかなければならないでしょうね。

 

人気ソーシャルゲーム『ぼくのレストラン』は実は苦戦続きだった!? ソーシャルゲーム成功のカギとは?

 

-9-Bit:新作ゲーム、海外事業と最近の enish の状況についてお話を伺ってきましたので、次は enish という会社についてお聞きしたいと思います。まず、enish が創業された頃のお話をお伺いします。安徳さんは enish を創業する前はどんなことをされていたんですか。

 

-安徳:最初はシステム開発の会社をやっていまして、当時はメール、スケジュール、TODO等の管理をオンラインで統合するサービス等を開発していました。その会社がヤフー株式会社に買収されて、しばらくはヤフーで主にモバイルサービスの立ち上げ・運営を担当していたのですが、改めて自分で事業を立ち上げようと思いまして enish の前身となる株式会社シンフォニーを起業しました。

 

-9-Bit:ヤフーを辞めてもう一度御自分で起業しようと思われたのは何故でしょうか。

 

-安徳:私がヤフーに入った時は社員数が200人くらいだったのですが、退職した時には5000人くらいになっていたんですね。そうなるとやはり大企業特有の動きにくさやスピードの遅さなんかもあったりして… 以前自分で経営していた会社を志半ばで売却してしまったという事もありましたし、改めて自分の手で一からビジネスを作り上げたい、という思いがあったからですね。

 

-9-Bit:シンフォニーでは、起業時からゲームをビジネスにしようと考えられていたんですか。

 

-安徳:いえ、最初はマーケティングソリューションサービスを提供する会社として始めました。ところが起業してしばらくしてから Facebook でジンガのゲームが大ブレイクしまして、これは面白そうだなと思い、そこからゲーム開発に転身しました。

 

-9-Bit:そこからゲーム会社としてスタートされたわけですね。最初に開発されたタイトルはどのようなものだったんでしょうか。

 

-安徳:一番最初に作ったのが『ぼくのレストラン』です。当初は SNS 上で展開するものではなく、独自のオンラインゲームとしてリリースしました。ところが、DAU(Daily Active User 1日のサービス利用者数)がほとんどないに等しい時もあったりしまして、「やばい、このままじゃ会社潰れる」なんていう事になってしまいまして… 1ヶ月くらいそんな状態が続いた時に飛び込んできたのが、mixi アプリのオープン化です。話によると、サービス開始直後からとんでもない数のユーザーが集まると聞きまして、慌てて『ぼくのレストラン』を mixi アプリに対応させて…

 

-9-Bit:もしその時に mixi アプリオープン化がなかったら…

 

-安徳:私も路頭に迷っていたでしょうね(笑)。でも、mixi アプリでリリースしてみると、あっという間に数十万人規模の DAU が来て。

 

-9-Bit:それまでとは天と地の違いがありますね。

 

-安徳:それからは続いてオープンした Mobage(当時は「モバゲータウン」)にもリリースしたんですが、実はまたその辺りからしばらく苦しい時期がありました。

 

-9-Bit:mixi、Mobage とサービスすればかなりのユーザー数が集まったことと思いますが、何故でしょうか。

 

-安徳:ユーザーが集まっても、マネタイズが上手く機能していなかったからです。今になって思い返すと、お金を払って遊びたくなるような「ゲーム」になっていなかったな、と。色々新しいゲームを作っては出すんですが、そこをわかっていなかったのでどれもビジネスとしては失敗してしまって… この時は本当に厳しかったですね。

 

-9-Bit:その状態から回復できたのは、どうやって?

 

-安徳:その後に GREE がオープン化した時に、グリー株式会社に資本を入れていただきまして、マネタイズのノウハウをみっちりと教えていただきました。最初は中々上手くいかなかったんですが、何度も何度も直して直して、と積み重ねていったらだんだん上手くいくようになりまして。GREE で『ぼくのレストラン』を出して4~5ヶ月くらいで何とか事業としてプラスになるところまで漕ぎ着けられました。

 

-9-Bit:『ぼくのレストラン』はカワイイ系のゲームとしてかなり人気のタイトルなので、順風満帆だったのかと思っていましたが… 実際はかなり山あり谷ありという感じだったんですね。

 

-安徳:その後は順調にユーザー数も売上も伸びるようになり、今に至っています。

 

「ソーシャル」が繋ぐ「縁」 事業拡大に向けて変化していく会社と環境

 

-9-Bit:当初は株式会社シンフォニーという社名だったのを、「株式会社 enish」と改名されたのは何故ですか。

 

-安徳:上場する前に、「シンフォニー」でネットで検索してみたら言葉が一般的過ぎて当社のサイトが中々出てこないんですね。今後の事を考えるとそれは良くないなと思いまして、上場をきっかけに変更しました。

 

-9-Bit:「enish」という名前の由来は?

 

-安徳:当社はソーシャルゲームをビジネスにしている会社ですので、「ソーシャル=縁」という事で、「縁(えにし)」を英語っぽく読み換えて「enish(エニッシュ)」と名付けました。

 

-9-Bit:それは面白い名付け方ですね。社名に続いて、最近会社のロゴも変更されましたがどのような目的で変更されたんでしょうか。

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

▲以前の会社ロゴ

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

新しい会社ロゴ

 

-安徳:以前のロゴよりもシンプルに、色も一色にして、どんなところに表示されても当社のロゴだとわかるようなものにしよう、という事で変更しました。ぱっと見て、会社のイメージを表現するには凝ったデザインのものよりもシンプルな方が印象が強くなりますし、覚えてもらいやすいと思いますので。

 

-9-Bit:そして更に、昨年末にそれまでのオフィスから六本木ヒルズに移転されました。

 

-安徳:社員の増加に伴いオフィスの拡大が必要になったのですが、どうせだったらワンフロアで入れる所がいいなと思って探していたらちょうど良い場所が空いていたのでここに決めました。あと、眺めが良かったので(笑)。

 

-9-Bit:本当に眺めがすごく良いですよね。オフィスの内装も緑があったりヨーロッパ風な所があったり、とオシャレで個性的だなあという印象なのですが、オフィスのデザインには何か意味が込められているのでしょうか。

 

-安徳:デザインのコンセプトとして「シェア・キャンバス」というのがありまして、1つのキャンバスに皆で自由に絵を描くように発想を持ち寄ってものづくりをしていけるオフィス、というのを意識してデザインしてます。

 

-9-Bit:なるほど、オフィスの色々な所に打ち合わせができるスペースがあったり、オフィスの入口に落書きできる壁があったり、といったところにそのコンセプトが表れているように感じます。これは半ば私の趣味でもあるんですが(笑)、最後にオフィスを見学させていただいて今回のインタビューの締めとさせていただきたいと思います。本日は色々なお話を聞かせていただき、どうもありがとうございました。

 

-安徳:ぜひゆっくり見ていってください。

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

エントランスにて。壁には社員が描いた「ラクガキ」が、同社らしいほのぼの感を醸し出している。

 

ゲーム会社オフィス探訪:株式会社 enish 編

 

筆者の趣味の1つである「オフィス見学」。今後【Creator’s Voice】でもぜひ定番企画としていきたい!という事で(オフィス自慢のゲーム会社様は 9-Bit まで御連絡を!)コーナー名を付けてお届けしたい。名付けて「ゲーム会社オフィス探訪」。今回は2013年12月に六本木ヒルズ森タワー 39F に移転された株式会社 enish の新オフィスを御紹介しよう。安徳社長のお言葉に甘えて、オフィスの奥までじっくりと拝見させていただきました。

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

エントランスから中に入るとまず受付スペースが現れる。緑が多く落ち着いたデザインだが、窓の向こうにはコンクリート・ジャングル「六本木」を一望できるというダイナミックなスペースだ。

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

受付横にはカワイイアイテムやガジェットがディスプレイされている。「気がつくと、社長が何か買ってきてはこっそり置いてるんです」(社員・談)

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

受付から奥へと進むと、こちらも六本木を見下ろす眺望の会議室が並ぶ。欧風の壁が何ともオシャレ。

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

オフィスフロア内は爽やかなグリーンとホワイトのデスクがズラリと並ぶ。広くてゆったりとした環境だ。

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

オフィス正面には長いホワイトボードと社員の打ち合わせ用のテーブルが並んでいる。テーブルの上もホワイトボード用マーカーで書くことができるようになっている。

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

enish 社是が大きく書かれている壁面。思わず身が引き締まる内容。(筆者には耳の痛い言葉も…)

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

壁に貼られている社内報「週刊エニッシュ」。俺がエニッシュの秋元康だ!!(笑) こういうシャレのきいたものがあるのも同社の社風らしい。

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

奥に行くと、オフィスフロアと仕切られた形でカフェスペースが存在する。

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

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カフェスペースの中は、本物のカフェのような作りになっている。コーヒーベンダー等のドリンク類はもちろん、書籍やゲームをプレイするスペースもあり、打ち合わせにはもちろん、リラックスするにもうってつけだ。

 

enish 安徳孝平氏 インタビュー 第ニ回 Creator's Voice

カフェスペースには何故かアイスクリームの冷蔵庫まで。よく見ると「エ●キモー」ではなく…ッ!? 夏になると実際にアイスクリームも入っているそうだ。

 

実に社員の遊び心に溢れる enish のオフィスでした。enish の皆さん、お仕事中にお邪魔しまして失礼致しました!

 

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