2014年04月23日(水) 17時40分

【OGC 2014】Supercell CEO イルッカ・パーナネン氏・OGC 10周年記念講演概要 『Clash of Clans』開発者が語る成功の秘訣とは

『Clash of Clans』の世界的ヒット、そしてソフトバンク・ガンホーによる買収と、国内外で最も注目されているゲームデベロッパーが Supercell だ。その CEO、イルッカ・パーナネン氏が OGC 2014 に登壇した。

今回、OGC 10周年記念講演として登場したパーナネン氏は、Supercell という企業について、またその成功の要因について語った。最後には日本のゲーム開発者に向けてのメッセージも語られた。

 

supercellceo

Supercell CEO
イルッカ・パーナネン氏

 

たった3年で9億ドルの企業へ 急成長を実現した3つの要因とは

 

ヘルシンキの大学で国際ビジネスについて学んだパーナネン氏は、起業家としていくつかの企業のスタートアップ・買収を経て、Supercell の起業に共同参画した。

2010年5月の創業当初は6人の共同参画者のみでスタートした Supercell。「ベストの人間が集まればベストのゲームを産み出せる」をコンセプトにゲーム開発を開始した Supercell はあっという間に規模を拡大し、起業からわずか3年で社員数140人、年間9億USドルの売上を出す会社に成長した。

Supercell は何故成功できたのか? パーナネン氏はその要因として3つのポイントを挙げた。

 

1. 柔軟にユーザーのニーズを吸い上げる組織体制と企業文化
Supercell の組織体制は決定権をトップが持つ伝統的なトップダウン型ではなく、ユーザーに最も近いところにいるクリエイターが決定の権限を持ち、組織の上層部はクリエイターがその決定に従って効率的に業務を行うことができるように行動するという、トップとダウンが逆転した逆三角形の体制を執ることでより早い決定・アクションを実現していると言う。

またパーナネン氏はこのような組織体制を維持するためには以下の3つを意識することが必要だと語った。

(1) 小規模の独立したチーム単位で業務に当たる このチームを “cell” と呼び、パーナネン氏曰く「Supercell は super な cell によって構成する会社」なのだそうだ。

(2) マネージメント・プロセスを最低限に抑える 組織のマネージメント業務や余計なプロセスを増やすことで開発スピードに悪影響を与えないように意識することが必要だ。

(3) 失敗を喜ぶ イノベーションや成功は失敗なくして産まれない。失敗を恐れて萎縮するような組織では新しいものを産み出すことはできない。

 

2. 長く続くサービスとしてゲームを考える
ゲームをリリースした後に、如何にユーザーを飽きさせず楽しませるか、がゲームをヒットさせる大きなポイントになると言う。 その参考例としてパーナネン氏は『Clash of Clans』で最近のアップデートにより実装された「クラン対戦」を挙げた。このように大きなアップデートは簡単なことではないが、それによってユーザーはより一層ゲームに没頭するようになる。

 

3. スタートアップ当初からグローバルを想定
真のゲーム会社になるためにはグローバル展開が必須とかんがえるパーナネン氏は、Supercell のスタートアップ当初から欧米のみならずアジアでも1位を取れる、真の「ナンバー1ヒットゲームを作る」という事を掲げてゲーム作りに取り組んだと言う。

 

その結果、Supercell の代表作『Clash of Clans』『Hay Day』は欧米に限らず日本も含め世界中のランキングチャートでトップを獲得するゲームとなり、Supercell は名実共にワールドナンバー1のゲームデベロッパーの地位を獲得することとなったのである。

 

何故フィンランドのゲーム会社がナンバー1ゲーム会社になったのか? フィンランドゲーム開発事情

 

パーナネン氏がよく訊かれるのが、「何故フィンランドの企業が世界的にヒットするゲームを作れるのか?」という質問だそうだ。

北欧に位置するフィンランドは特に冬の気候の厳しさ故に家の中に閉じこもることが多い。そのような環境から歴史的に家の中でも楽しめるような娯楽、例えば物語を作ったりゲームといったものが発展したと言う。

このように伝統的に「ゲーム」が根付いている文化があるため、今でもゲーム開発を推進する活動やイベントが多く行われているのがフィンランドの特徴なのだそうだ。

例えば、フィンランドで毎年開催されているクリエイティブイベント「Assembly」は、今やヘルシンキのスタジアムで行われるような巨大イベントに成長。数千人の PC ファンが集い、様々なイベントやプレゼンテーションが行われるクリエイティブなイベントだ。こういったイベントが催されることで、ゲーム開発者が育成される環境が出来上がっているという。この他にも様々なゲーム開発イベントも開催されており、実はフィンランドのゲーム開発は大変な盛り上がりを見せているのだ。

また、フィンランド政府からの援助も大きい。国際的に活躍する企業という事でフィンランド政府から表彰された Supercell も様々な援助を受けているのだそうだ。

このように様々な方面からゲーム開発者を育成する環境が整っているため、Supercell のような企業が出現するのも当然の帰結だと言えるのだろう。

 

Supercell が日本に進出した理由 「完璧なパートナー」の存在

 

次にパーナネン氏がよく訊かれる質問という事で挙げたのが「何故日本市場に進出したのか?」という事だ。

パーナネン氏は「そもそも日本のゲームが好き」だそうで、任天堂等日本のゲームを尊敬していると言う。

また、日本のモバイルゲーム市場が大きいという理由も挙げられたが、最も大きな理由の1つとして強調したのが「完璧なパートナー (Perferct Partner)」と出会うことができたという点だ。

そのパートナーとは言わずもがな、ソフトバンク・孫正義氏とガンホー・オンライン・エンタテインメントの森下一喜氏だ。

昨年 Supercell の株式の 51% を買収し、一大ゲーム連合をぶち上げたソフトバンクxガンホーxSupercell。『パズドラ』と『Clash of Clans』の間でクロスプロモーションを仕掛ける等の動きを見せているのは周知の通りだ。

この買収に当たってパーナネン氏が重視したのが「Supercell の独立性の維持」という点。パーナネン氏にはゲーム史に残るゲーム・何年経っても覚えてもらえるようなゲームを作りたいという思いがあるが、それを実現するためには時間がとてもかかる。そのため、株主には事業を長期的に捉え、尚且つ Supercell が作りたいものを作れるように独立性を尊重してくれるパートナーが必要だったと言う。この考え方を尊重してくれるパートナーがソフトバンク・ガンホーなのだそうだ。

また、ガンホーは『パズドラ』という、パーナネン氏が「成功の要因」の1つとして上げる「サービスとして優れたゲーム」を日本で成功させた会社でもあり、そこに Supercell との共通性があるという点でもパーナネン氏にとってパートナーとして「完璧」と言わしめる存在であったようだ。

 

パーナネン氏から日本のゲーム開発者へメッセージ 日本での”仲間”も募集中

 

講演の最後に、パーナネン氏は「日本のゲーム開発者に贈る3つの “Tips” として下記の3つを挙げた。

 

1. 日本のゲームデベロッパーの能力は高いが、国内に限定しているところも多い。ぜひ世界に向けて発信してほしい。
App Store・Google Play を介せばグローバル配信は容易になったし、「面白いゲーム」を遊びたいというところは日本も世界も変わらない。日本のゲーム開発はそのポテンシャルを十分持っている。

但し、そのためにはローカライズが必須であり、それも「Good」レベルではなく「Perfect」なレベルのローカライズが求められるそうだ。ここは中々ハードルが高いというデベロッパーも多いかもしれない。

 

2. 自分のルーツやゲームに込める魂を忘れないでほしい。
グローバルマーケットを目指すからと言って、「じゃあ世界に受け入れられるようなものを作ろう」と考えるのではなく、自分のゲーム開発の根幹にあるものやゲームに込める「魂」に根ざしたゲームを開発してほしい。そうして作ったゲームが面白ければ、どんな国・地域でも受け入れられるはずだ。

 

3. 上の2つを忘れないでね。

(※何故「3つ」なのかと言うと、「主催者から3つ挙げてくれ」と頼まれたからだそうだ。最後の回答にパーナネン氏が苦慮した様子が伺える)

 

『Clash of Clans』をヒットさせ、たった数年でトップデベロッパーの地位に登り詰めたパーナネン氏だが、ゲームを愛する心や作りたいゲームへの情熱がその原動力の源になっているようだ。

 

尚、Supercell は日本でも人材を募集中との事。世界のトップデベロッパーと一緒にゲームを作ってみたいというゲーム開発者にはチャンスだ!

 

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