2013年12月19日(木) 11時00分
  • INTERVIEW

【Creator’s Voice】株式会社 gumi 代表取締役社長 國光 宏尚氏インタビュー 第二回「gumi のグローバル戦略はまずアジア攻略を目指す」

株式会社 gumi 代表取締役社長・國光宏尚氏の「Creator’s Voice」第二回では、同社が掲げる2つ目の戦略「グローバル」について、どのように進めているかお伺いした。そして最後には「あの人」の名前が…ッ!?

 

世界のモバイルゲーム市場は5兆円の巨大市場へ

 

9-Bit: 國光さんは今のグローバル市場をどのように捉えていますか。

 

國光氏: まず前提として、今は世界中のゲーム市場が急速に伸びていっているんですね。例えば韓国のゲーム市場は、去年はほぼ0に近かったんですが、今年の Google Play の市場規模は日本と同じくらいで、アメリカよりも大きいんです。韓国では iOS が全く普及していないという事情があるので、実は日米では iOS 市場を足すとそれぞれ韓国の倍くらいの市場規模になるのですが、Android 単体で考えるともう既に日本・アメリカと並ぶレベルまで成長しています。
更に中国の場合は凄まじい勢いで伸びてきてまして、こちらも昨年は市場は0だったんですが今年は恐らく1000億円を超える市場になる見込で、月商10億円を超えるゲームも出現してきています。

 

9-Bit: すごい勢いで拡大しているんですね。

 

國光氏: こういった動きは世界中で見られている現象なんですね。ある調査機関によると、去年の世界のモバイルゲームの市場規模が約3000億円なのですが、今年は約1兆円になる、と。これが2016年には約5兆円になると言われているんです。
ところが、日本の市場規模は5~6000億円くらいで頭打ちになると言われている。つまり、日本の市場は世界全体から見るとせいぜい10分の1程度の市場規模になるんです。

 

9-Bit: そうなるとゲーム会社にとって日本国内市場の存在感はかなり薄くなりますね。

 

國光氏: ですから、如何に素早くグローバル市場で勝ち抜けるようになるか、という事が企業にとっては決定的に重要なポイントになってくるのではないかと思います。

 

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gumi の対グローバル市場の方針は「独立主義」と「グループ連携」

 

9-Bit: グローバル市場を攻略するに当たって、gumi としてはどのような手段を講じていますか。

 

國光氏: 当社は去年の4月に韓国オフィスを設立して以来、シンガポール、中国(上海)、台湾、インドネシア、フィリピン、パリと次々に現地拠点を立ち上げました。現在は海外の社員が約300人、日本の東京と福岡オフィスの社員数の合計が約350人ですから、ほぼ日本と同数の社員が海外拠点にいるという体制を構築しています。

 

9-Bit: それぞれの海外拠点はどのような役割を担っているんですか。

 

國光氏: これは海外の拠点に限らず福岡オフィスもそうなんですが、基本的に東京本社がなくてもそれぞれの拠点だけで事業を運営していくことができる独立した組織になっています。そしてまずそれぞれの拠点が独自の戦略を元に自分のエリア・国で勝つことを目指す。韓国の拠点はまず韓国で成功する、日本はまず日本で成功する、と。そして、そこでヒットゲームが出たらグループ内で密接に連携してそれを他の拠点・エリアでも広げていく、というのが基本戦略になっています。

 

9-Bit: 『ブレイブ フロンティア』の海外展開はその一例と言えますね。

 

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ブレイブ フロンティア

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『ブレイブ フロンティア』 レビューはこちら

 

國光氏: 『ブレイブ フロンティア』は10月に韓国でリリースして、その後台湾、中国と順次サービスインしていきます。
韓国での売上はすごく良いんですよ。韓国チームのスタッフにデータを全て提供して、現地でうけるようにしっかりローカライズ・カルチャライズをして出しています。『ブレイブ フロンティア』は開発メンバーのこだわりで、例えば必殺技の名前とかがかなり日本独特なものだったりするんですけど、それをただ単純に翻訳するだけだと意味がわからないじゃないですか。開発のエイリムからの要望もあって、そういうところも現地のユーザーにわかるように・うけるように咀嚼して作っていったので、リリース直後から好調な動きを見せています。

 

9-Bit: 韓国市場の話では、先程『進撃1942』というシューティングゲームが成功例として挙がっていましたが、このゲームは日本で作られたものではないですよね。

 

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進撃1942 for Kakao

itunes_download

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(※言語設定により、ダウンロード・インストールできない場合があります。)

 

國光氏: そうです。元々香港の会社が開発・販売していたゲームを gumi コリアが Free to Play にアレンジしたりカカオと深く連携したり、といったアレンジを入れて作り直したものなんです。最初に韓国チームから「これをやりたい」と言ってきた時は「何で今更シューティング?」と思いましたが(笑)、現地のチームが現地の事情に合わせて考えて作った結果が成功に結び付いたわけです。

 

「コストダウン」と「多言語対応」をアウトソーシングでカバーするフィリピン・インドネシア

 

9-Bit: 他の拠点でも全て同じように事業展開を進めているんですか。

 

國光氏: 基本的にはそうなんですが、例外的にフィリピンとインドネシアの拠点はシンガポール支社の下部組織としてそれぞれ違う機能を持っています。

 

9-Bit: それぞれどのような機能を持っているんですか。

 

國光氏: インドネシアはコスト削減を目的としてデザイン、アート関連のアウトソーシング拠点となっています。日本やシンガポールでアートの作業をするとどうしてもコストがかさむんですが、インドネシアにアウトソーシングすると10分の1以下のコストでできるというのが魅力的。ですので、アートはかなりインドネシアに振っていますよ。

 

9-Bit: 海外のリソースを使ってコストダウン、というのはよく聞く話ですが、インドネシアという国が出てくるのは意外でした。中国、タイ辺りが主流なのかなと思っていましたので…

 

國光氏: いやいや、そんなことはないですよ。実は欧米系のゲーム開発会社のアウトソーシングスタジオはインドネシアに結構たくさんあるんです。当社の場合は海外展開をする際によく欧米の企業の動きを参考にしていて、その流れでインドネシアにスタジオを設立することになったんです。

 

9-Bit: フィリピンの拠点はどのような役割があるんですか。

 

國光氏: グローバルにゲームを展開するためには、例えば10言語でゲームを作って出すということになるんですが、そうなるとカスタマーサポートも10言語で対応しないと本当の意味でのグローバル展開とは言えないんですね。ポルトガル語でゲームを出したら、ユーザーはポルトガル語で遊んでいるんですから当然問い合わせもポルトガル語で来る。

 

9-Bit: それは確かにその通りです。

 

國光氏: この辺りをわかってなくて、英語に対応して App Store でリリースする時に「Global」のボタンをクリックすれば海外展開しているという事と勘違いしている会社も多いんじゃないかと思うんですが、本当の意味でグローバルで展開するという事はカスタマーサポートも含めて多言語対応をしていかないといけないものなんです。
ですが、それを日本でやったらとんでもないコストがかかる。ところがフィリピンでは伝統的に欧米系の企業がカスタマーサポートやコールセンターをアウトソーシングしていたという事情があるので、そのための人材が多くコストも抑えられます。そこで当社でもカスタマーサポートスタジオとしてフィリピンに拠点を設立しました。

 

9-Bit: そういった意味でも本当に全世界包囲の体制を整えているんですね。

 

次に狙う市場はロシア、ブラジル、北米… その前にまずはアジア攻略!

 

9-Bit: 海外拠点は他にも増やしていく予定ですか。

 

國光氏: ええ、そうですね。

 

9-Bit: 次に攻めようと考えているのはどの地域ですか。

 

國光氏: 次に狙わなければならないのはロシア、その次がブラジルと考えてます。

 

9-Bit: 巨大市場の1つであるアメリカには gumi の拠点がありませんが、北米市場には進出されないんですか。

 

國光氏: 北米市場はひときわ競争が激しいですからね。それに、良い人材を雇おうと思ったら人件費が圧倒的に高い。安い人材を雇って戦って、勝てる市場ではありませんから。コストパフォーマンスという点でまだバランスが取れていない、というところがあるのでいつ進出しようか考えながら様子を見ている、という感じです。

 

9-Bit: となると、今後特に期待されている市場というのはどの地域になるでしょうか。

 

國光氏: もちろん先に挙げたロシア、ブラジルというのは巨大市場として期待しているところではありますけど、当面の一番大きい命題は「アジアで勝つ!」という事ですよね。
3年後の全世界で5兆円というモバイルゲーム市場の中でも、アジア市場はその6割を占めると予想されています。モバイルゲーム市場は世界のどの地域でも今後大きく伸びてくるビジネスですが、じゃあその中でうちがどこにフォーカスするかと言ったらまずアジアなんですよ。

 

9-Bit: それは何故ですか。

 

國光氏: アジアはやっぱり流行る・うけるコンテンツが似ているんですよ。でも欧米はアジアと比べるとローカライズ・カルチャライズしなければならないハードルが高い。マネタイズモデルはもちろん、ゲームモデルも全て現地に合わせないと欧米で受け入れられるものにはならない。その点ではアジアの方が絵柄のテイストやゲームモデルでも日本に似ているところが多い。なので、gumi はまずアジアでしっかりと成功を収めて軸を築いて、それから欧米やロシア、南米に挑戦していきたいと考えています。

 

9-Bit: これまでのお話を聞いていると、gumi が積極的に海外拠点を作っている理由がよくわかります。グローバル市場で競争していくためには、それぞれの国・地域に根ざした体制・人材とノウハウがないと戦うことができない、という理念に基づいているというわけですね。

 

國光氏: そうなんですよ。現地でしっかりとサービスしようと思ったらローカライズ・カルチャライズして運用までできるチームがなければならないし、マーケティングの手法も国によって変わってきますからね、ローカルの事情に強いマーケティングチームも絶対必要になる。更に、ローカルでの展開を強力に押し進めるためには強いパートナー企業、例えば韓国だったらカカオ、中国ならテンセント、といった企業としっかり提携しなければ中々単独では難しいので、そうなるとそういうパートナーとがっちり組むためのビジネスデベロップメントチームも必要になるし、提携するという事は当然契約書も必要になるわけだから現地の言語に対応できる法務チームもいる。そしてさっき話したようなカスタマーサポートチームも、といった体制が全て揃って初めて「グローバルで戦える」と言えるんじゃないかな。日本ではそういう体制をしっかり持っているゲーム会社はあまりないと思うんですが、当社は1年半以上かけて今の体制を構築してきて、頭一つ抜けたんじゃないかと… 思っていたんですが…

 

9-Bit: …が?

 

國光氏: それを孫さんにあっさりひっくり返されてしまった、という(笑)。

 

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(第三回に続く)

 

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