2013年12月16日(月) 08時30分
  • INTERVIEW

【Creator’s Voice】株式会社 gumi 代表取締役社長 國光 宏尚氏インタビュー 第一回「gumi がネイティブアプリへシフトした理由とは」

今回の「Creator’s Voice」は、株式会社 gumi の名物社長・國光宏尚氏にお話を伺った。ネイティブアプリ全盛の時代における同社の戦略とは一体どのようなものなのだろうか。

『ブレイブ フロンティア』(開発:株式会社エイリム)『進撃1942』といった大作を次々とリリースする一方で、拠点の設立やアプリのローカライズ版リリース等海外展開を積極的に推し進める株式会社 gumi(以下「gumi」)の代表取締役社長・國光宏尚氏に、同社の事業戦略とモバイルゲーム業界についてインタビューを敢行した。

第1回は、gumi のネイティブアプリ戦略の現状について聞いた。

 

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gumi が掲げる2つの戦略-「ネイティブ」「グローバル」とブラウザゲームの終焉

 

9-Bit: 本日はよろしくお願い致します。

 

國光宏尚氏(以下「國光氏」): よろしくお願いします。

 

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9-Bit: まず最初に、gumi のゲーム事業の基本戦略について教えてください。

 

國光氏: 当社では去年辺りから「ネイティブ」と「グローバル」の2つの戦略に集中する形で一気に業態の変更を試みていまして、それがここにきて上手く形になってきています。直近では売上の約7割がネイティブアプリによるもので、その中でも半分くらいが海外市場からの収益になっています。
ブラウザゲームもまだ稼働はしていますが、新規開発はネイティブに絞っています。

 

9-Bit: ブラウザゲームをやめてネイティブに大きくシフトする理由は何でしょうか。

 

國光氏: 理由は2つあります。
まず1つ目は、海外で普及しているのは圧倒的にネイティブアプリだという点です。ブラウザで作ってしまうと、ターゲットが国内市場だけに絞られることになります。
実は日本のモバイルゲーム市場は世界の中の約10%くらいの市場規模しかないんです。つまり、国内向けにゲームを作ると、最高でも世界の市場の中の10%しかとれないという事。ですから、全世界の市場をターゲットにしたいと考えたらネイティブアプリを作るしかないのです。
もう1つの理由は、単純にネイティブアプリで作った方が面白いゲームが作れるという事です。
ブラウザゲームでも、面白いゲームを作れば流行る・うまくいくという声もありますが、ネイティブアプリで開発した方がサウンドも入れられますし、動作もさくさく動きますよね。もし誰かがネイティブではできない、ブラウザならではの画期的なゲームシステムを発明したら状況は変わるかもしれませんが、少なくとも現状で出ている全てのゲームはネイティブで作った方が面白いゲームになると思います。
以上の2つの理由で、これはもうネイティブにシフトするしかないだろうと判断して、一気に体制を変更したというわけです。

 

9-Bit: 確かに、元々ブラウザで出ていたゲームが次々にネイティブアプリに移植されていっていますね。

 

國光氏: ですが、ブラウザゲームからネイティブアプリへ移植するというのは、今後難しくなるでしょうね。実際に人気のあるゲームを見ればわかるのですが、最近のランキングで上位に来ているのは『ブレイブ フロンティア』(エイリム)や『チェインクロニクル』(セガ)、『Clash of Clans』(Supercell)といった最初からネイティブアプリとして設計・開発されたゲームが多いという傾向が強くなっています。これからはブラウザゲームで人気のあったものをネイティブに移植するだけでは成功するのは難しいでしょう。

 

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ブレイブ フロンティア

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『ブレイブ フロンティア』 レビューはこちら

 

9-Bit: ブラウザゲーム全盛期と今の状況を見て、どこが違うと感じますか。

 

國光氏: 当時は取り敢えずカードバトルを作っていれば成功していた、という点です。カードバトルゲームを作るノウハウも各社しっかり持っていたし、そのため失敗するという事も少なかった。
ところがネイティブアプリになるとゲーム性が複雑になってくるのでバランス調整が難しい。更に、ゲームにオリジナリティが求められるようになってきた。オリジナリティを出そうとすると、今度はそれがユーザーに受け入れられるかどうかがわからないという事態も出てくる。そうなると出してみて初めてわかる事もあるので、取り敢えずリリースしてみて、色々な所をしっかりと改修してから本格的なプロモーションを行なって普及させる、というケースも増えるんじゃないかなと思います。

 

9-Bit: オンラインゲームのオープンベータのようなものですね。

 

國光氏: そうです。今までは例えばカードバトルゲームのシステムが1つあったらガワ(見た目・デザイン)を変えるだけで良かった。だけどこれからはそうはいかない分、出した後でゲームバランスやオリジナリティの部分をしっかりブラッシュアップしていって、しっかりしたマーケティングをして育てていく、という事が重要になってくるのではないでしょうか。
それから、ブラウザゲーム全盛期と明らかに異なるのは、これは「パズドラ」によるものだと思いますが、ゲームファンがスマホゲームに相当数流れてきているという点です。
ブラウザのゲームは、コンシューマゲームファンはほとんどやっていなかったと思うんですよ。それがゲームファンもプレイするようになったので、いわゆるゲームメディアを活用したマーケティングも当時と比べてかなり重要になってきた。そのゲームの新規性・オリジナリティの部分をしっかり特集してもらって、ゲームファンにきちんと浸透した上でそこから更に拡散していく、という事が重要なマーケティングの1つになってきました。

 

9-Bit: それはかつてのゲームの市場に近い形に戻りつつあるというように見受けられます。

 

國光氏: 今のゲームマーケットではオリジナリティのあるゲームが強いというのは結構はっきりしていますね。現時点での世界のマーケットの三強ゲームを挙げるならば『Clash of Clans』、『Candy Crush Saga』そして『パズル&ドラゴンズ(以下「パズドラ」)』の3つだと思いますが、それぞれゲーム性も課金モデルも違いますがどれもオリジナリティがあるでしょ。経営という観点からも、ガワ替えで中途半端な売上を狙うよりは、この三強のようなビッグタイトルでホームランを狙っていく方が正しいんじゃないかなと思います。

 

9-Bit: ですが、ホームランを狙ってゲームを作るというのは難しいのではないかと思いますが…

 

國光氏: その点では弊社の戦略は明確で、まずとにかくたくさんのゲームを作るんです。gumi と言うとカードバトルの成功がどうしても目立ちますが、実はその前にはかなりたくさんのゲームを作っていたんですよ。育成ゲーム、動物園シミュレーション、水族館シミュレーションに恋愛シミュレーション… その中から『さんごくっ!』と『任侠道』というカードバトルゲームがヒットしたので、その分野に集中して成功した、という経緯があります。
その方針はネイティブアプリでも明確で、何が当たるかわからないからまず全ジャンル作る。ブラウザからの流れを汲んだカードバトルや戦略性の高いカードゲームも出しましたし、『ブレイブ フロンティア』のような本格的なRPGや『竜王と勇者アレン』のような戦略性のあるRPGもリリースしましたし、その他にも色々なジャンルのタイトルを作っています。その中でも特に『ブレイブ フロンティア』と、韓国で『進撃1942』というカカオで出しているシューティングゲームがヒットしたので今はそれを更に広げる展開にも力を入れている、というところですね。

 

9-Bit: つまり、「数撃ちゃ当たる」で当たったものを軸にして事業を展開していく、というわけですね。

 

國光氏: 結局、ゲームビジネス、エンタメビジネスの経営でやることはシンプルで、「コントローラブルな継続的なイノベーション」と「破壊的なイノベーション」のバランスを如何に取るか、なんですよ。

 

9-Bit: 具体的にはどういう事でしょうか。

 

國光氏: よく「ゲームは何が流行るかわからない」と言いますけど、あれは嘘なんですね。例えば、「ドラゴンクエスト」というゲームを産み出せるかどうか、これは誰にもわからない。だけど、「ドラクエ」が流行った後に「ドラクエ2」「3」を出すとか、「ドラクエ」をベースにして「ファイナルファンタジー」を作るべきだ、というのは誰にでもわかることですよね。最初の大ヒットになるタイトルを出せるかどうかというのはギャンブルと同じことで、これを産み出すということは当たるか外れるかの二択という「破壊的なイノベーション」なんです。
そして、そのヒットタイトルを出した後に確実に成功する続編や同じジャンルのゲームを出して収益を上げていく部分が「コントローラブルな継続的なイノベーション」という事。このバランスを取って進めていくのが本来のゲームビジネスの経営なんです。
GREE・Mobage の時代は全て後者になってしまっていたんですが、今はコンシューマゲームも続編ばかりが出て、同じような状態になってしまっている。そうなると、新しいものが出てこないので市場は縮小していく一方になってしまう。そうならないように、ゲーム会社は絶えず「破壊的なイノベーション」を産み出すためのギャンブルもやらなければならない。それをしながら、成果が出たタイトルが出てきたらしっかりと育てて継続的な成功を産み出さなければならない。

 

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9-Bit: その考え方から、まず新しいイノベーションとなるタイトルを産み出すところから始まって、次にそれをグローバルに展開して成功を収める、という戦略が gumi では確立しているという事なんですね。
それでは次に、2つ目の戦略の軸である「グローバル」展開についてお話を伺いたいと思います。

 

(第二回に続く)

【Creator’s Voice】株式会社 gumi 代表取締役社長 國光 宏尚氏インタビュー 第二回
「gumi のグローバル戦略はまずアジア攻略を目指す」

 

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