2013年10月11日(金) 20時10分
  • INTERVIEW

【Creator’s Voice】株式会社シェード 代表取締役社長 横田幸次氏インタビュー 第三回「今も昔も変わらない、“ゲームの面白さ”って一体何だ?」

株式会社シェード(以下「シェード」)横田幸次氏のインタビュー最終回となる第三回は、シェードという会社、そしてそこで働く社員像、更に御自身の好きなゲーム等、様々な話題についてお聞きした。

 

ゲーム開発をサポートする立場としてのシェード。ミドルウェア開発事業

 

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9-Bit: 前回まではスマートデバイス向けのゲーム開発について中心にお聞きしてきましたが、他に注力していきたい事業はありますか。

 

横田氏: 当社は独自の3Dエンジンを開発してまして、そちらにも力を入れていきたいと考えてます。

 

9-Bit: 3Dエンジンと言うと、今はUnityがメインストリームのような形になっていますが、Unityとの兼ね合いはどのように考えていますか。

 

横田氏: Unityはすごく良いエンジンで、これから3Dのゲーム開発を始める場合はUnityを使うのが1つの選択肢になると思います。ただ、開発者視点から見るとどうしても行き届いていないと言うか、不満に感じるところもあって… そのせいで作りたいゲーム、ゲームデザインが実現できないということがあるとしたら、それはすごく不幸な事だと思うんです。それに対して、当社のエンジンはゲームに合わせた細かいチューニングが可能な作りになっていますので、ゲームデザインを生かすことができるという点で強みがあるかなと思っています。

 

9-Bit: なるほど… その点では、「打倒Unity!」みたいな気持ちはありますか。

 

横田氏: いや、それはちょっと(笑)。Unityの良さももちろんありますし、ユーザーの意見を取り入れてもっと良くなっていくと思うんですよね。でも、Unityでは足りないところ、そのためにゲームデザインを諦める、そういう事をさせないようなエンジンを我々としては提供していきたいですね。環境のせいにして、ゲーム開発を妥協する、という事がないように。

 

ゲームを通して社会の余暇を豊かに。「余暇善用」を目指すシェード

 

9-Bit: 今までシェードという会社を経営していく中で、一番大きな転換期というのはどのタイミングでしたか。

 

横田氏: 先にお話ししたように当社はある会社の子会社として始まったのですが、そこから独立して責任を自分達で抱えていくことになった時が一番大きい転換期でしたね。今まではある程度親会社に頼っていた部分が、全て自分たちの責任になりましたから。

 

9-Bit: 親会社という後ろ盾がなくなって、名実共に「自分達の会社」となったわけですね。そうして今のシェードという会社が出来上がったという事ですが、横田さん御自身はこのシェードという会社をどういう会社にしていきたいと考えていますか。

 

横田氏: 我々自身としては楽しくゲームを作って、そうすることで皆さんの生活を潤す存在になりたいと考えています。私達が誰かの人生を変えるとかそういう事ではなくて、あくまで手助けするという形で。我々は『余暇善用』と言っているんですけど。

 

9-Bit: 余暇善用、ですか。

 

横田氏: ええ。当社の社是でもあるんですけど、ゲームを通して社会での余暇を有意義に過ごしていただいて、そしてまた皆しっかり勉強したり仕事したりがんばっていただきたいな、っていう。それをエンターテインメントという形で手助けしたい、と。ですから、ゲームによって気分の悪い事があってはいけない、そういうゲームは作らない、という意識を持って、余暇善用をしていただくために良いコンテンツを作り続けるという事がシェードの使命だと思っています。

 

自分で考えて動ける人と一緒に働きたい。「職人集団・シェード」

 

9-Bit: ここまでのお話を聞いて、「シェードで働きたい」と思われる人もいるのではないかと思いますが、採用については積極的に行なっているんでしょうか。

 

横田氏: 積極的というわけではないんですけど、我々が作っているものに感銘を受けて一緒に作りたい・仕事したいという方にはどんどん来てほしいですね。

 

9-Bit: 御社が求める人材はどういう人ですか。

 

横田氏: “できるだけ自分で考えて動ける人”ですね。当社では、社員にこうした方がもっとやりやすい・もっと良くなるという事を考えて発言できる、提案型の人材であることを求めています。仕事に対して受け身だとその人自身も中々成長できませんし、日本人の良いところでもあると思うんですよ、皆でどんどん改良していってクオリティの高いものを作ることができるというところは。具体的な設計図がなくても、こうだったらいいんじゃないか・ここは改良した方がいいんじゃないか、という理想であってもいいので発言するのが重要だと考えてます。

 

9-Bit: お聞きしていると、御社は「職人集団」というイメージですね。皆さんそれぞれ自分ができる・作れるものがあって、更にそれを良い物にするためにお互いに切磋琢磨する、という。そんなイメージです。

 

横田氏: そうですね。そういう環境ですから、言い出しっぺがやればいい、という事ではダメなんですよね。一デザイナー・プログラマーであっても積極的に発言していくうちに結局ゲームデザインを全て手掛けるようになった社員もいるくらいです。そういう人材であれば、一緒に仕事していきたいなと思っています。

 

他のゲーム会社に訊いてみたいこと

 

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9-Bit: ここまで色々と御質問させていただきましたが、逆に横田さんから他のゲーム会社の方々に訊いてみたい質問はありますか。

 

横田氏: そうですね、うーん… やっぱり『今後、どのプラットフォームが生き残るか?』かな(笑)。

 

9-Bit: シビアな質問ですね(笑)。因みに、横田さん御自身はどれが生き残ると思われますか?

 

横田氏: 生き残る、というのとはちょっと違うんですけど、Androidはどんどん形を変えていって、メジャープラットフォームになると思っています。iPhoneも、今は良いですけど、果たして未来永劫続くのか、というのはちょっと疑問があります。そういう意味では、形態を変えやすいAndroidの方が今とは違う形になっても残るかもしれない、と感じてます。

 

9-Bit: なるほど。その答えは、いつくらいに出てくるんでしょうね。

 

横田氏: スマートフォンに関しては、今年か来年辺りに、ある程度の決着がつきそうな気はしているんですよ。色々な形態が融合したり淘汰されたり、もう予兆は出てきていますけど、そういう時期が来ているんじゃないのかな、と思います。

 

「緊張感」がゲームを面白くするのは、今も昔も変わらない

 

9-Bit: ここまで堅い話題が続きましたので、最後にちょっと柔らかい質問をさせていただきます。横田さん御自身の好きなゲーム、思い入れのあるゲームは何ですか。

 

横田氏: やっぱり昔やったゲームは忘れられないですけど… 特に自分の中に残っているのは『ファイアーエムブレム』です。すごくシビアだなというところが。

 

9-Bit: 死んだらもう生き返らないですもんね(笑)。

 

横田氏: そうそう。でも、最近の『ファイアーエムブレム』は生き返らせたりセーブができるというのを聞いて、それはどうなの?と。

 

9-Bit: ゆとり仕様、って言うんですかね(笑)。ゆるくなってますよね。

 

横田氏: もう1つ好きだったのが、PC版の『ウィザードリィ』。移動したら壁の中にいる、という(笑)。

 

9-Bit: あれになると、動けなくなっちゃうんですよね。

 

横田氏: で、そうなったら、ディスクドライブがデータをセーブする前にディスクドライブのボタンをバーンと押して、セーブさせない、ということをしてですね(笑)。

 

9-Bit: (笑)

 

横田氏: その速度たるや、という(笑)。そうしないと今の状態をセーブされて、どうしようもなくなっちゃいますからね。ハードの特性を逆手に取って、そういう事をしてました。シビアでしたねー(笑)。

 

9-Bit: 『ファイアーエムブレム』の話もそうですけど、緊張感ありましたよね。昔のゲームって。

 

横田氏: 緊張感、という点では、最近のソーシャルゲームでもありますよ。例えば、決められた時間内に条件をクリアしないといけない、とか。それで、通信のラグといった特性を読んで、これをやるためにはこのタイミングで仕込んでおかないと…とか。そういうところが、昔のゲームみたいで懐かしいなーと感じるところもありますよ。

 

9-Bit: 今のゲームにも、形を変えた緊張感がある、と。

 

横田氏: そういうところが、今のゲームの面白さなのかな、と思ったりもしますね。

 

9-Bit: 結局のところ、今のゲームも昔のゲームも、そういう緊張感とか攻略とか、根本のところは変わってないという事なんでしょうね。

 

横田氏: それがそのゲームを遊ぶモチベーションになったり、ゲームに対する没入感が高まるというところに繋がっていくんだと思います。

 

9-Bit: そういう意味では、今も昔もゲームというのは実は本質的には全く変わっていないものなんですね。今回は色々なお話をお聞かせいただき、どうもありがとうございました。

 

横田氏: ありがとうございます。

 

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物静かな横田氏が秘める、ゲームと会社に対する熱い思い

 

筆者が横田氏と初めてお会いした時に感じた印象は、「物静かで落ち着いた人」というものだった。淡々とした喋り口、こちらの言う事をしっかり噛み締めるように聞いた後に語られる内容はわかりやすく、聞き手の腑に落ちる説得力のある話し振り。割と我の強いタイプが多い「社長」という立場の人でありながら、一味変わったタイプの人だなと感じていた。

今回のインタビューの中で趣味についてお伺いしたところ、「ウイスキー」という回答だった。その理由を訊くと、「時と共に味が少しずつ変遷していくウイスキーのアナログなところが、デジタルの世界にいると心地よく感じられる」という、何とも味のある答えが返ってきた。「渋い…」 落ち着きがなくフラフラしている筆者は、思わずそう唸ってしまった。

しかし、事業やゲーム開発についてお話を聞いていく中で、ゲーム開発に対する熱い思い、新しい分野にも積極的にチャレンジしていく貪欲さといった、それまでの私の中のイメージを覆す面を見せていただき、さすがシェードという業界でもその名を轟かす会社を築き、ここまで大きくしてきた「豪胆さ」と「芯の強さ」を感じることができたのが、今回のインタビューでの一番の驚きだった。

ゲーム開発の老舗として、またスマートフォンゲームアプリの先駆者としてのシェードと横田氏の御活躍に今後も注目していきたいところだ。

 

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