2013年10月04日(金) 14時00分
  • INTERVIEW

【Creator’s Voice】株式会社シェード 代表取締役社長 横田幸次氏インタビュー 第一回「シェードと『Destroy Gunners』誕生秘話」

株式会社シェード(以下「シェード」)という会社を御存知だろうか。恐らくゲーム業界人の間ではかなり多くの人が「ああ、あの…」と思い浮かべる会社ではないかと思うが、逆に一般的な認知度で言うとかつては知らなかった人の方が大半だったのではないだろうか。

 

衝撃を与えた3Dゲーム『Destroy Gunners』を産みだした「シェード」とは

 

shade_yokota_01  shade_yokota_02

 

と言うのも、シェードは開発受託、つまり他の企業からの注文に応じてゲームを開発する裏方の立場にいる場合が多い会社だったからだ。そのため、誰もが知っているメジャーなゲームを開発しているにも関わらず、その会社名がゲームと共に表舞台に立つということは少なかった。

しかし、ここまでの話はPlayStation・Wii等の家庭用ゲーム機、いわゆるコンシューマゲームと呼ばれるプラットフォーム上での話。スマートフォンが世に現れ、それまでのフィーチャーフォンとは比べ物にならないほどのスペックによってゲームプラットフォームとしてコンシューマの携帯ゲーム機に追いつき追い越すという勢いの昨今、受託専門のゲーム開発会社、ウェブ専門のIT企業といった新たな勢力が「ゲームメーカー」としてマーケットでその存在感を発揮する土壌が出来上がっていった。

そのような状況の黎明期と言える頃。iPhoneではApp Storeで主にカジュアルゲームが台頭し、その対抗馬としてAndroid OS 1.5・1.6が出回るようになった頃、ゲームファン、ゲーム業界の間に衝撃を与えたゲームがAndroid向けにリリースされた。

 

『Destroy Gunners』

 

destroygunners_icon

google_download

 

まだスペック面でも決して高いとは言えない時期に登場し、「スマホでここまでのゲームができる!」という事を示したその3Dロボットアクションゲームを開発・リリースしたのがシェードだった。

その後もゲームのクオリティとゲーム性、そして3DCGに対する強いこだわりを感じさせるゲームをスマートフォン向けに次々にリリースするシェードの代表取締役社長であり創設者である横田幸次氏に今回お話を伺うことができた。ゲーム開発から会社経営まで多岐に渡るお話になったので、全3回に分けて紹介しよう。

第一回となる今回は、シェードの創設からスマートフォン向けゲーム『Destroy Gunners』の開発のきっかけについてお話を伺った。

 

2Dから3Dへ、オフラインからオンラインへの変革期とシェード設立

 

9-Bit: 本日はよろしくお願い致します。

 

shade_yokota_03

 

横田氏: よろしくお願いします。

 

9-Bit: まず最初に、シェードを設立される前の御自身の職歴を教えてください。

 

横田氏: 私がゲーム業界に入ったのは、まず27、8年ぐらい前にPC-88・PC-98向けのパソコンゲームの会社にアルバイトで、ドット絵のデザイナーとして入社したのが最初でした。しばらく開発の経験を積んだ後、フリーランスでゲーム開発をしていました。基本的にはデザイナーとしてですが、ゲームデザインもしていましたね。

 

9-Bit: どのようなきっかけから会社を設立されたんですか。

 

横田氏: 当時はちょうどゲームが2Dから3Dに移り変わるという時期で…

 

9-Bit: という事は、PlayStationやセガサターンが出た頃ですか?

 

横田氏: そうですね。それで、ある老舗のメーカーと非常に繋がりが深い会社がありまして、その会社が次世代機を出した他のメーカーと取引を始めるのが難しいので別会社を作って開発をしたい、と。そのための会社設立に誘われたのがきっかけでした。私自身、新しい技術である3DCGにも興味がありましたので、会社の立ち上げに参画することを決意しました。

 

9-Bit: 会社を立ち上げられた当初は、人数は何人だったんですか。

 

横田氏: 最初は3名から始めました。デザイナー1名、プログラマー1名、そして私の3人です。ですが、実際に会社を始めてみると私自身はデザインの仕事をしている時間は全くないほど色々な業務で忙しい、という状況でしたし、デザイナーは経験の長いスタッフだったんですけどプログラマーはゲーム開発の経験がない状態から始めたので、立ち上げは本当に大変でしたね。

 

9-Bit: 当時を思い返して、特に印象深かった事は何ですか。

 

横田氏: あの当時は、ちょうどWindows3.1からWindows95に変わるタイミングだったんですけど、それはつまりインターネットやネットワークが導入されていく時期でもありました。それまではフロッピーディスクにセーブして手渡しして、という形でデータをやり取りするのが普通でしたが、オンラインを通してやり取りするようになって、革新的に開発体制が変化していきました。そういったコンピュータやネットワークが変わっていく時代なんだというのを実感し始めた時期だった、というのが当時の一番の思い出ですね。

 

9-Bit: 会社の立ち上げが、ちょうど大きなパラダイム・シフトの始まった時期だったんですね。

 

横田氏: そうですね。グラフィックは3Dになり、システムはオンラインになり… 時代がガラッと変わる時期が会社のスタートだった、と。そういう風に感じています。

 

9-Bit: 会社を設立されてからは、主にどのような業務をされてきましたか。

 

横田氏: 基本的には3DCGの家庭用ゲーム機向けゲームの開発一筋でした。プラットフォームは時代によって変化していきましたけど、家庭用ゲーム機一本でしたね。

 

9-Bit: これまでに多数のゲームを開発されてきたと思いますが、御社で開発された家庭用ゲーム機のゲームで特に印象に残っているタイトルは何ですか。

 

横田氏: まず、当社のデビュー作の『グランストリーム伝紀』というタイトルです。会社の立ち上げで右往左往する中、約2年かけて開発しましたので、やっと形になった時にはやっぱり感動しました。アニメムービーもふんだんに取り入れて、3Dで動かして、楽曲もオーケストラを使って… SCEさんにも非常に協力していただいたという事もあって、大変印象に残っています。

 

shade_yokota_gran

http://www.shade.co.jp/dev1997a.html
1997,1998 (C) SCE Inc.

 

9-Bit: 2年は長いですね。それだけ付き合っていると思い入れも深くなりますよね。

 

横田氏: ええ、そうですね。それと、当社で独自に企画開発して宣伝もメーカーさんと一緒に手掛けた『天下人』というタイトル。これもそういった独自の展開をしたという事で印象に残っています。

 

shade_yokota_tenka

http://www.shade.co.jp/dev2006b.html
(C)2006 SEGA/SHADE

 

家庭用ゲーム機からスマートフォンアプリへ。GREEとの出会いから生まれた『Destroy Gunners』

 

9-Bit: 当初は家庭用ゲーム機向けゲームの開発中心というお話でしたが、シェードの現在の事業内容はどのようなものですか。

 

横田氏: 家庭用ゲーム機向けのソフト開発業務が現在も主軸となっていますが、3年前にスマートフォンアプリの開発を開始して以来、どんどん比重が大きくなってきているところです。

 

9-Bit: どのようなきっかけでスマートフォンアプリ開発に参入されることになったんでしょうか。

 

shade_yokota_04

 

横田氏: 当時、既に出ていたiPhoneでもゲームを作ることができるという事は知っていたんですが、iPhoneだとどうしてもAppleによる規制が厳しいと聞いていましたので中々手軽に始められるというものではないと思っていました。それでもっと手軽に始められるものはないかなと模索していまして、そのタイミングでAndroidが出てきたんです。

 

9-Bit: では、そのAndroidという新しいプラットフォームが出てきたという事で、まずそれをターゲットに始めてみよう、となったんですね。

 

横田氏: そうです。何かできないかな、と。それまでのAndroidはゲームが普通に動かせるほど性能が良くなくて…

 

9-Bit: ハードのスペック的にもまだまだ非力だった時代ですよね。

 

横田氏: そうなんです。そこに、Android 1.5、1.6というのが出てきて、これはもしかしたらゲームがまともに動くんじゃないかという希望が感じられてきまして。その頃に色々な関連セミナー等に参加したりしていましたら、何か作らないかとGREEさんに声をかけていただきました。それが2011年の初めくらいですね。

 

9-Bit: 運命的な出会いがあったわけですね。

 

横田氏: 情報を集めたり基礎研究をしてきていたところでしたのでタイミングは良かったのですが… ちょうどその時に、震災(※東日本大震災)が起きたんです。

 

9-Bit: あ、そうですね、ちょうどそのタイミングで震災がありました。

 

横田氏: これからこういうゲームを作りたいという打ち合わせをGREEさんとした後、社内でブレストしていたその時に皆で『何か揺れてない?』となって…

 

9-Bit: えっ、ちょうどその日だったんですか?

 

横田氏: その日です。(笑)

 

9-Bit: それは大変な目に…

 

横田氏: それでしばらくバタバタしてしまいましたけど、幸いな事に当社は大きな影響や損害がありませんでしたので、開発を着手・継続することができました。そうして完成したのが1作目の『Destroy Gunners』Android版でした。

 

9-Bit: という事は、『Destroy Gunners』を開発するのは、GREEと共同で開発すると決められたことがきっかけだったんですね。

 

横田氏: いえ、最初はまず自分たちの作りたいものをアプリ上で動かせるかどうかの検証でしたが、何もお金に結びつけられないのが不安でしたのでGREEさんの広告キャンペーンを利用させていただきました。それがある程度上手く行ったのですがソーシャルゲームにおいて当社はマーケティングやネットワークゲーム運営の経験がなかったので、どのように進めていくかという事をまず1作一緒に作って勉強させていただく、という形で『Destroy Gunners』を共同開発しました。

 

9-Bit: GREEとの共同開発はその後の『SCARESOUL』等でもされていますが、スマートフォンゲームを展開していく上でGREEと組んで進めていくというのはどのようなメリットがありますか?

 

横田氏: 色々な出来事や問題が起きた時に、GREEは経験上答えを持ってらっしゃいます。それを訊いて教えていただけるというのはやはり大きなメリットなんですが、逆にその答えを元に“別の答えがあるんじゃないか?”と考えることができるのが非常に大きいと思います。今はこうなっているけど将来はこうなんじゃないか?という、未来を見据えて色々な答えを比較して動けるというのはとても大事なことだなと感じています。

 

9-Bit: なるほど、GREEはそういった判断・予測をするための情報や資料を資産として持っていらっしゃるわけですね。

 

横田氏: ええ。とは言え、当社が作っているものは数あるGREEのアプリの中でもかなり毛色が変わっているというところもありますので、必ずしもセオリーが通用するわけでもない、という場合もありますけどね。そこは一緒に悩みながら答えを作らなければならないところです。

 

shade_yokota_05

 

(第二回へ続く。次回は10月8日公開予定です。)

 

このライターの記事一覧:コケタニ
関連ワード:Creator’s Voice ,

フォローして最新情報を見る

Twitter Facebook