2013年09月22日(日) 17時30分

【TGS 2013】基調講演 (2) ガンホー・オンライン・エンターテイメント「で、結局のところ『パズドラ』のガンホーってどんな会社なの?」

東京ゲームショウ2013基調講演レポート第2弾は、『パズル&ドラゴンズ』(以下「パズドラ」)の勢いが今も尚止まらず、快進撃を続けるガンホー・オンライン・エンターテイメントだ。今回の講演は対談形式で行われた。

登壇したのはガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社(以下「ガンホー」)代表取締役社長CEOの森下一喜氏。そして、司会として日経BP社・日経BPヒット総合研究所研究員の品田英雄氏が登場した。

 

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講演は品田氏に寄せられた質問に森下氏が答える質問形式の対談という形で進められた。ここでは質問と森下氏の回答をまとめる形で御紹介しよう。

 

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テーマ①パズル&ドラゴンズ、大ヒットの秘密

 

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ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
代表取締役社長CEO 森下一喜氏

 

累計1900万ダウンロード、AppStore・Google Playでも常に首位~上位をキープするスマホゲーム最大のヒット作。最初のテーマはやはり『パズル&ドラゴンズ』について。

 

Q:「パズドラが大ヒットした理由を、社長としてどう分析していますか? 過去の経験を踏まえて教えてください」

森下氏自身が過去のインタビュー・講演で常に発言している事でもあるが、成功は「運とタイミング」によるものだと言う。中でも良い開発チームに巡り会えたという事が大きな運だったそうだ。尚、森下氏が成功の要因を「運」としているのは、「驕らないため」と自戒の意もこもっているとの事。

開発の中で「成功」が見えたターニングポイントは、元々横画面で企画していたのを縦画面に変更した瞬間だった。片手持ちで、親指の可動範囲内で操作をし、画面上部にモンスターを大きく表示するという現在のスタイルが出来上がった瞬間に、「いける」と確信したと言う。このスタイルは例えば電車の中でも片手でプレイできて、女性にとってもコンパクトを持っているようなスタイルでプレイできてかわいく見える、といった「ゲームで遊ぶ=ライフスタイルの一環」という事が明確にイメージできたのが成功の要因の1つとなったようだ。

 

Q:「パズドラを作るに当たって、森下社長が細かな所までダメ出しして社員が困ったという話を耳にしました。本当ですか? どんな所を直したんですか? 教えてください。」

森下氏はガンホーの開発5原則として、下記のキーワードを挙げた。

①直感的 ②革新的 ③魅力的 ④継続的 ⑤演出的

中でも①直感的という点について、ドロップを動かす操作を如何に気持ち良く、女性から見てもかわいいと思えるように操作させるかという点に相当こだわりを入れたとの事で、何度も作り直しをさせたと言う。

ドロップの操作については紆余曲折があったそうで、最初は上下左右に1つ分しか動かせなかったのだが、だんだん可動範囲を広くさせていくうちに「いっその事全画面で動かせるようにしたらどうか」という提案があり、それによって操作の制限をなくす代わりに時間制限を入れてプレイヤーに焦らせるようにしてゲーム性を構築していったとの事だ。ゲームシステムは一長一短でできあがったものではなく、試行錯誤を繰り返して構築されていったという事がわかるエピソードだ。

 

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(実際に自ら操作しながらパズドラのシステムについて説明する森下氏)

 

Q:「パズドラは女性達に大人気となりましたが、女性の心を掴むためにはどんな工夫がなされているんでしょうか?」

開発スタッフの中には奥様にテストプレイしてもらってその意見をもらった、という人もいたそうだ。

森下氏の場合は、自分のお子さんにプレイさせて直感的にゲームを理解できるかをチェックしていたとの事。子供はつまらなかったらすぐに手放すし、二度とやらなくなると言う。やはりターゲットとなるユーザー層の意見を取り入れていくという事は大切な事のようだ。

 

Q:「3DS(『パズドラZ』)を出すのは何でですか?」

3DS でパズドラを出したいというのは開発中の2011年9月の段階で既に話に挙がっていた事だったと言う。元々スマホ版パズドラにも主人公キャラ・ストーリーを入れるという構想があったのだが、容量の都合でカットせざるを得なかったそうだ。そのため、そういった要素は3DSで、という考えが当初からあったとの事だ。

また、開発当初からパズドラは大人から子供まで楽しめるゲームを、という理念の元に企画されていたので、3DSで出すことは最初から決められていたと言う。もちろんスマホ版が成功したからこそ実現した事ではあるが、森下氏にとっては当然の流れだったのだろう。

 

Q:「CEDEC(の講演)でお話をされましたけども、ヒットの方程式がやっぱりないという話をしていましたが、本当のところはどうなんですか? 運が良かっただけ、という話を色々してますけども、外向けに言っているだけではないような気がします。今度こそ本当のところを教えてください」

「ヒットの方程式は“ない”と言っているんじゃなくて、ヒットの方程式は“やっぱない”と言っているんですね。考えてはいるんですね。方程式はあるんじゃないかと」(森下氏)

しかし、ヒットの方程式はあったとしても、ユーザーも進化していくので時代と共に変わっていく。同じ方程式は通用しない。だからこそ、「絶対的なヒットの方程式」はない、というのが結論だそうだ。

ゲーム、特にスマートフォンのビジネスではトレンドの変化は非常に早く、1ヶ月後にはパラダイムが大きく変わることもありうる。そういった中で、方程式を定めて決めつけてしまうことはその流れに乗り遅れるという事にもなるので、ガンホーとしては上にも掲げたように常に「革新的」なチャレンジを続けていく(森下氏はこれを「破壊と創造」と発言した)のが必要だとしていた。

 

テーマ②ガンホーって、どんな会社?

 

Q:「他の日本のゲーム会社とは違うように思います。違うと感じさせるのは、どうしてなんでしょうか?」

家庭用ゲーム機向けSDKの受託開発からスタートしたというガンホー。その事業を通して様々なゲーム業界人と接するうちに、「ガンホーらしいことをしたい」という思いからゲーム開発へと進んだと言う。現在の社員数は約200人。

森下氏自身のテーマとしては「やんちゃな会社」を目指しているそうだ。また、社長室をガラス張りにして社員とコミュニケーションを取りやすくしたり、メールではなく直接会話するようにしている等、社員と社長との間に壁を作らないフランクな社風である事が伺えた。またその様子は、森下氏自身が撮影・披露した社内の様子を映したビデオからも感じられた。

 

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(40歳になった森下氏の誕生日を祝う社員の様子)

 

Q:「会社的に言うと、リリース日を決めない・事業計画を作らないという噂を聞きましたが、上場企業としてありえるのでしょうか?」

これに対しては、「会社としての事業計画はある」と回答する一方、開発するに当たって計画を作っても所詮机上の空論でしかなく、プロデューサーという立場からは「ほどよい形の」計画を作ってしまうのは当然だと言う。ガンホーの場合は森下氏が企画・開発に自らも直接深く関わっているため、事業計画はなくとも社長がゲーム開発事業の全容を把握しているとの事だ。

尚、「僕はわがままにゲームを作るので、お金がいくらあっても足りない」という事で、CFO に対してはゲーム開発費以外は極限まで切り詰めろと指示されているとの事だった。

 

Q:「ガンホーは急成長しましたが、チームワークを維持するために心がけていることはありますか?」

チームワークを維持するための施策の例として、今年8月、ガンホー創立10周年を記念してグループ総出・約300人全員で浅草サンバカーニバルに参加した例を紹介(その様子をビデオでも紹介)。社員数が100人を超えた時期に、社員・セクション間でやり取りもなく口をきいたことがないというスタッフが出てきたことに危惧し、お祭好きの森下氏がサンバカーニバルへの参加を決めたとのことだった。

 

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(浅草サンバカーニバルには全社員がお揃いのユニフォームで参加)

 

テーマ③森下社長って、どんな人?

 

この項は省略するが、裕福だった少年時代・そこから一転してどん底に陥った高校時代、そしてお笑い芸人を目指しつつもコンビ解散によってサラリーマンへ。内装工事業、ソフト開発会社を経て3人でガンホーを設立するという、波瀾万丈の人生について語られた。

尚、業界内でも公然と囁かれている「森下氏が合コンの達人」説に関しては「あくまで自分はお笑い担当で場を盛り上げるだけ」という弁明はされたものの、明確な否定はなかった。

 

ゲーマ④ゲーム業界の将来はどうなる?

 

Q:「ゲーム業界はコンシューマゲームとスマホゲームが激しい争いを続けていますけど、この先どうなっていくと予想されますか? これまでの経験を踏まえて教えてください」

「コンシューマゲームしかやらない」という森下氏は、一ユーザーとしてはコンシューマ市場にはもっと大きく発展してほしいと発言。一方で、スマートフォンの登場によってゲームに触れたことがない人に「ゲーム」というものに触れてもらうことができたことでゲーム市場の拡大にも繋がった。

そういった状況から、例えば今後はスマホゲームは「テレビドラマ」、コンシューマゲームは「映画」というイメージで、人々のライフサイクルの中にそれぞれが違った位置付けで「ゲーム」を発展させるために機能してほしい、と語った。

 

Q:「今のゲーム業界に足りないものは何ですか? 世界に飛び立てるゲームはどうすれば産み出せるのでしょうか? 御教示ください」

ガンホーはパソコン向けのオンラインゲームを60ヶ国で提供しており、国によって色々特色はあるものの「世界」「海外」を意識する必要もないし、日本も世界の1つとして捉えればクリエイティブに国境はない。特にスマートフォンの世界では企業の大小に関係なく世界市場に打って出るチャンスがあるので、どんどんチャレンジすればいいのではないか、と答えた。

 

Q:「どんな人達・どんなチームとお仕事していきたいですか?」

「意識が高い人」。意識を高く持てば、向上心によって知識はつき技術力は上がっていく。森下氏も、自身が今ガンホーの社長をやっているのは自分が一番意識が高いから、と捉えているそうだ。

 

「ガンホー創業時のような新しい会社が生まれるように業界に貢献したい」

 

講演の締めくくりとして、森下氏は今ガンホーがあるのは様々な企業・人に助けられてきたからであり、自分達がガンホー創業した時のように新しい会社が生まれていけるように今度は自分達が業界の発見に貢献していきたいと発言し、今回の講演を終えた。

 

『パズドラ』の躍進によって一躍業界のリーディングヒッターとしての地位を確立したガンホー、そして森下氏。しかし今回の講演を聞いていると、パズドラ完成までには何度も何度も地道に作り直しをし、「面白いゲームを作ろう」と愚直に全社を挙げて努力してきた、という地味な、しかしだからこそ大変な積み重ねの帰結であるという事がよくわかる内容だった。

今回の講演の内容は全体的には「模範的」なものに終始した印象が強く、割と「当たり前」と感じる部分が多かったように思えたかもしれない。しかし、大ヒットしたタイトル、そしてそれを作ったゲーム会社というものは、そういった「地味」な努力と積み重ねの結果に過ぎないという事の表れだったのではないだろうか。

これからは3DS『パズドラZ』を筆頭に、コンシューマゲームへの挑戦を仕掛けていくであろうガンホーの目論見は果たして見事に実を結ぶのか。来年の東京ゲームショウ2014を楽しみに待ちたい。

また、1年後には果たしてどの企業がガンホーのポジションに駆け上がってくるのかも注目したいところだ。

 

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