2015年02月10日(火) 12時00分
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衝撃的すぎる “雰囲気ゲー”『el』開発者インタビュー①:「あのエンディング」に秘められた「救いの真実」とは?

美しいグラフィックとサウンド、そしてなにより衝撃的なエンディングが国内外で話題となったライトフライヤースタジオの『el』。今回はプロデューサーの西川氏に「el に秘められた真実」についてお話を伺いました。

 

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グリー Japan Game事業本部Wright Flyer Studios部マネージャー
『el』開発プロデューサー 西川 具亨 氏(以下 西川)

 

『el』で一番伝えたかったことは、「物事を多層的に見ること」の大切さ

 

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9-Bit昨年 9 月のリリースから現在まで、『el』の累計ダウンロード数はどれほどでしょうか?

 

西川現在は世界累計で約 120 万 DL です。内訳は日本が一番多いですが、海外ですとなぜかロシアが目立ちますね。

 

9-Bitへー、ロシア!

 

西川台湾や韓国といった東アジア圏でもご好評いただいていますが、ユーザー数はロシアが多いです。

 

9-Bitロシアというのは意外ですね。ロシアユーザーからの意見で何か特徴的なものはありましたか?

 

西川日本を含め東アジア圏ですと『el』の世界観が評価されているんですが、ロシアでは物語に対する反応が、賛否数多くありました。「この物語は悲しすぎる」というものから「平和を願う素晴らしい物語だ」といったものまで。

 

9-Bit国内外含め一番多かった反応というと。

 

西川それはやっぱりエンディングについてですよね(笑)。

 

9-Bitそりゃそうですよね(笑)。

 

西川エンディングが最悪すぎる」ですとか「それまで素晴らしかったのにエンディングですべてが台無しだ」など、色んな意見がありました。

 

9-Bit「すべてが台無し」(笑)。逆にあのエンディングについての肯定的な意見は?

 

西川実はエンディングが『el』で一番工夫した部分で、一見「悲しい結末」に見えるんですけど、見方を変えると「あれは救いでもある」となるようにしているんです。

 

9-Bit救い?

 

西川プレイしてくれた方にそれがちゃんと伝わったのか、という課題はあります。それでも「救済」という部分に気づいた方は、ストアのレビューなどでヒントを書いてくださったりするんですよね。「実はあれって……」という風に。また「色々と考えさせられた」と仰っていただく方もいました。

 

9-Bit確かに色々考えますよね、アレ(笑)。作り手としては、「救い」という部分をもう少しユーザーにわかってほしかったという想いはありますか?

 

西川:「気づいたら意味が変わるエンディング」というテーマで作っているので、そういう想いがないわけではないです。ただ『el』のエンディングを「Bad End」と見た方でも一つの物語として完結するように作っているので、「世の無常」と捉えてもそれはそういう意味があるし、気づいてくれれば、また違った意味が現れる。それはそれでいいと思います。

 

9-Bit一面的ではなく多層的なストーリーを作ったけども、それをどう解釈するかはユーザー次第だと。

 

西川:「多層的に物事を見ることが大事なんだ」ということが『el』で一番伝えたかったことで、アプリの Achievement でも「結末は変わらないけど、意味は変わるんだよ」という内容を入れています。でも作り手の欲求をユーザーに押し付けてはダメだなと思っていて、気づかなくてもちゃんと楽しめるものを作るということを心がけていました。ストーリーだけでなく、アクションゲームとしても。

 

9-Bit『el』というタイトルは、どういう意図でつけられたのでしょうか。

 

西川何も決まっていない時から「エル」という名前は仮タイトルとしてありましたが、段々「エル」という名前に愛着が出てきました。そのうち開発メンバーから「“ミカエル”、“ウリエル”のように、末尾に“エル”とつけると天使になる」という話が出てきて、そこからストーリーなどを組み立てていきました。

 

9-Bitel は、たとえば性別は男性、女性という区別のない中性的な存在なんでしょうか。

 

西川開発チームの中では男子というイメージです。ただキャラクターデザインはどちらにも取れる、ユニセクシャルなキャラクターとして作っています。

 

9-Bit非常に中性的ですよね。僕の第一印象では「女の子」だったんですけど、「el」はスペイン語で男性名詞を表す語になるし、Achievement では「彼」という表記があるし。

 

西川Achievementでの表記は難しかったのですが、「彼」という言葉は「彼方」とか「あちら側」を指し示す意味もあるし、性差なく使えるかなというところで使用しました。

 

9-Bit先ほど天使の話が出てきましたが、そもそも「el」とは何者なのでしょうか。

 

西川:el は何者なのかというと、「ルシフェル」のイメージで、エデンでアダムとイブに「知恵の実」を勧めたヘビの位置づけなんです。彼がリンゴを与え失楽園が起こり、その罪で牢獄に閉じ込められていたというところから物語が始まります。

 

9-Bitファーストシーンの、あの洞窟教会のような場所ですね。

 

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西川彼はあくまで善意で、「知恵」を与えるためにリンゴを勧める。「エデン」という名の「檻」に囲われ、何も知らないまま生きていくことは幸せと言えないんじゃないか。そこが『el』の原点となります。

 

9-Bitゲーム冒頭から、洞窟の壁には羽のようなイメージがあり、el の傍らにはリンゴの芯が転がっているという、象徴的なモチーフが散りばめられていますよね。つまり、el とは堕天使であると。el に力を与える白いハトの存在は?

 

西川「白いハト」は神の象徴で、最初閉じ込められている el の元に白い羽が落ちてきますが、これは神による堕天使救済の物語なんです。

 

あのエンディングにはちゃんと「救い」がある

 

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9-Bit『el』に登場する天使はルシフェルだけですよね?

 

西川『失楽園』は人間の原罪を扱う物語で、他の天使の物語とは比べ物にならないくらい重要なテーマだと思っているので、そこにフォーカスして作っていきました。

 

9-Bitなぜ「人間の原罪」をテーマとしたのでしょうか?

 

西川チーム内で「何を伝える物語にするか」を話し合って、物の見方で何が大事なのかが変わるというメッセージを伝えようとなりました。それで、今度はそれをどんなテーマで描くかを 2、3 日考えて、あのエンディングシーンが思い浮かんだんです。

 

9-Bitあのエンディングシーンが最初のイメージだったんですね。

 

西川:悲しいことが救いになるような物語を書きたいという話が出た時に、救いとなると救われる原因、例えば許されるべき罪みたいなものが必要だな、と。それで「原罪」をテーマに選びました。

 

9-Bitあのエンディングは、初め見たとき「これ作った人スゲー “いい性格” してやがんなぁ」と思いましたよ(笑)。

 

西川レビューでも「人格おかしいんじゃないか」とか書かれました(笑)。

 

9-Bitエンディングについて、僕は「救いもあるけど、誰かを救うために死に続けなければならない宿命ってスゲー残酷だな」と思ったんですけど。

 

西川実はあのエンディング、あえてミスリードさせるような作りになっているんです。

 

9-Bitミスリード?

 

西川エンドロール後にタイトル画面に戻るので、一見「ループ」を暗示させるんですけど、実はあれはミスリードさせる仕掛けで、世界はループしているという解釈は我々の中では不正解ルートなんです。

 

9-Bitへー!

 

西川壁面に描かれていた翼は、磔にされた el から剥がれたものなんです。そして堕天使となり翼を失った el に最後、白いハト(神)が救済として翼を与えるというストーリーになります。この正解ルートに気づいた方が 3 名くらいいるのを Twitter 等で見つけ、「たどり着いてくれてありがとう!」って喜びました(笑)。

 

9-Bitなるほど。僕なんかは神によるすごいイヤらしい嫌がらせ(笑)みたいに思ってました。

 

西川神への皮肉じゃないですが、「偉大なものも見方で変わる」という側面を入れてはいます。「良いと思われていることも物の見方で変わってくる」という要素を物語に散りばめようとしました。

 

9-Bitそれでいうと、最後の老人も……。

 

西川物語上そこまで書いていないですが、彼には病気の娘がいて、やむを得ない事情でお金がなくなり途方に暮れている状況だったんです。

 

9-Bitへぇ、そんな設定が。

 

西川彼は空腹だけど、それ以上に薬を買うお金が欲しいんです。そこに el が来て、ああなってしまう。でも実は、『el』はエデンを追放された「罪人」である人間に対し、「尽くしたい」という信念を最後まで貫き通し、最後に神に赦され天使に戻るという物語なんです。だから、我々の中ではあのエンディングはちゃんと救われているんです。

 

インタビュー後編では『el』のサウンドについてファン待望の発表が! さらに「新作」のお話も!?

インタビュー後編ではゲーム開発時のエピソード、そしてユーザーからの評価が高い『el』のサウンドについてお話を伺います。サウンドではファン待望のアレがついに!? 掲載は 2 月 12 日予定となります。

 

インタビュー後編はこちら
衝撃的すぎる “雰囲気ゲー”『el』開発者インタビュー②:ファン待望の『el』サントラがついに! そして新作も!?

 

◆『el』ダウンロードはこちらから 

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(c) Wright Flyer Studios, Inc.
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